eコラム「北斗七星」

  • 2015.09.10
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年9月10日(木)付



亡くなってから71年目に"結婚"。そんなニュースが沖縄で話題に。発端は太平洋戦争中の1944年8月に起きた対馬丸の悲劇。沖縄が戦地と化す前、本土への疎開船・対馬丸が米潜水艦に撃沈された事件だ。多くの犠牲者を出し、当時、婚約していた池宮城秀則さんと静子さんの命も奪った◆対馬丸記念館(那覇市)はこれまで、静子さんの遺影の姓を旧姓の「比嘉」と表記してきた。しかし戦没者を刻銘した「平和の礎」(糸満市)などには「夫婦」として記されていることが分かったため、遺族の意向も踏まえ、「池宮城」の姓にこのほど修正したという◆互いの幸せを願い、戦禍を逃れるために乗船したはずの対馬丸。命を落とすとは夢にも思わなかったことだろう。もし今も生きていれば共に90代。子や孫に囲まれて幸せな余生を送っていたに違いない。そう思うと胸が痛む◆沖縄には戦争の爪痕が深く残る。地中に眠る遺骨もその一つ。先月、糸満市で公明党議員が遺骨収集作業に汗を流した際にも遺骨が見つかった。戦後70年が経った今も遺族の元にさえ帰れない遺骨がある現実。戦争のむごさをあらためて痛感させられた◆国は遺骨のDNAをデータベース化し、遺族特定を加速する方針。戦後処理は国の責務だ。遺族の高齢化も進んでいる。支援を急ぎたい。(治)

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