e参院特委 地方公聴会の意見陳述(要旨)

  • 2015.09.17
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年9月17日(木)付



極端な議論は国益損なう
東京財団上席研究員 渡部 恒雄氏



今回の平和安全法制の審議や報道で目にする現実と乖離した極端な議論は、民主的な安全保障政策の形成を損ねて周辺国にも不要な警戒を与え、日本の安全保障に良い結果をもたらさない。


建設的な議論の前提として、日本を取り巻く安全保障の大きな変化を理解する必要がある。今の法体系は、現在の国際情勢に対応しきれていない。今回の法制は、日本が自国をより確実に防衛し、東アジア地域や世界の安定へ行うべきことを法的に担保するものだ。


「日本のリスクが増えるのではないか」との不安がある。しかし、国際環境が変わっているのに古い想定のままだと適切な行動が取れず、むしろ日本の平和を損ないかねない。「中東地域など、日本の防衛とは直接関係ないところで米国の戦闘に巻き込まれる」との声もあるが、法的に参加は不可能だし、米国が日本にそのような要請をすることも想像できない。


将来を見渡すと、日本は東アジア諸国と多国間の安全保障協力、信頼醸成措置を形成する必要がある。国際平和支援法案は、諸外国の軍隊等に対する協力支援活動を想定している。今後、日本が東南アジア諸国と安定した多国間の協力体制を形成し、中国をその協力のネットワークに入れることができれば、東アジアはより安定する。例外なき国会の(事前)承認が前提で、日本の主体的な意思としての政策を担保する法律だ。


法制は、専守防衛の憲法9条の精神を変えるものではない。われわれは想定できることしか準備できない。それでも想像力を最大限に駆使し、対処できるように(準備)することが、世界や後世に対する責任だ。

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