e災害と個人情報
- 2015.09.24
- 情勢/社会
公明新聞:2015年9月19日(土)付
混乱防止へ公表を検討しては
鬼怒川の堤防決壊をはじめ関東、東北地方に甚大な被害をもたらした記録的な豪雨災害。1週間以上たった今も、2000人を超える人が避難生活を余儀なくされている。一日も早く平穏な生活を取り戻すことができるよう願わずにはいられない。
今回の豪雨災害では、被災者の安否確認をめぐって情報が混乱し、あらためて個人情報保護のあり方が問われている。
茨城県は常総市が行方不明としていた15人について、15日に全員の無事を確認したと発表した。市は本人と連絡が取れない人数を、12日以降は15人と伝えていたが、そのうちの1人は避難所にいたことが15日に判明するなど、安否情報が錯綜していた。
混乱の原因は、市が「個人情報保護の観点」から行方不明者の氏名を公表しなかったからだと指摘されている。
公表していれば、本人や親族などから連絡が入り、もっと早く無事を確認できていた可能性がある。自衛隊や警察などの捜索活動のやり方も、違っていたかもしれない。
自治体による個人情報の取り扱いは、慎重の上にも慎重でなければならないのは当然だ。だが、人命に直結しかねない大災害の場合には、プライバシーの保護よりも人命が優先されよう。
今回のような被害が広範囲に及ぶ災害では、原則として行方不明者の氏名を公表してもいいのではないか。
ただ、実際に公表するかどうかは自治体の判断に委ねられている。昨年の広島市での土砂災害や一昨年の伊豆大島での土石流災害では、自治体が行方不明者の氏名を公表したが、昨年の御嶽山の噴火では公表を見送った。判断するための明確な基準がないため、自治体の判断が分かれている。
自治体が公表をためらわないためには、何らかの判断基準が検討されるべきではないか。例えば、自治体が災害時の個人情報の取り扱いについて、有識者や住民の代表らを交えて検討し、一定のルールをつくるのも一案だ。その場合は、あらかじめ住民に周知徹底し、理解してもらうことも必要になるだろう。
人命を最優先に、運用のあり方を検討してもらいたい。