e介護施設での虐待 職員教育充実と人手不足解消を
- 2015.09.25
- 情勢/社会
公明新聞:2015年9月25日(金)付
介護施設での虐待事件が後を絶たない。19日、大阪市の特別養護老人ホーム(特養)で入所者の首を絞めたとして、介護士が殺人未遂容疑で逮捕された。先月も岩手県葛巻町の特養で、職員が入所者に約2週間のけがを負わせる事件が発覚している。
虐待が重大な人権侵害であることは論をまたない。介護従事者は、入所者の生活全般を預かる重要な立場にあることを今一度、肝に銘じてほしい。
何よりも、なぜ介護施設で虐待が発生するのか、原因を徹底的に究明し、再発防止策を講じなければならない。
大阪の事件では、逮捕された介護士が犯行理由を「介護する苦しみに気付いてほしくて」と供述したそうだ。いかなる理由であろうと虐待は許されない。ただ、介護職員の置かれた状況に目を向けることで、問題解決の糸口が見えてくるかもしれない。
厚生労働省の調べによると、2013年度に特養などの介護施設で起きた虐待は、過去最多の221件で、被害者の大半が認知症だった。加害者の多くは若い職員で、認知症への知識や介護技術の不足、厳しいストレスなどが虐待に至る理由に上っている。
職員がそこまで追い込まれる背景には、介護現場の人手不足と過重労働があるとされる。厚労省の調査では、約6割の施設が従業員不足を挙げ、低賃金や仕事の厳しさなどが、なかなか人材を確保できない要因になっている。
昨日、安倍晋三首相が、特養の入所待機者の解消に向け、施設の大幅な整備や職員の確保を強化する方針を表明した。当然のことだろう。加えて、施設や新たな人材の増加に対応してスキル(技術)向上の教育や研修を充実させないと、虐待はなくならない。
虐待防止への仕組みづくりも重要だ。介護サービス事業者などを第三者機関が専門的に評価するために都道府県が行う「福祉サービス第三者評価事業」の活用をさらに進めていきたい。第三者の目が入り、施設内の様子が少しでもオープンになれば、虐待の抑止効果にもつながるだろう。
この事業の利用は、介護事業者の努力義務ではあるが、政府は積極的な利用を促してほしい。