e主権者教育の高校教材 体験型授業で判断力を育もう
- 2015.10.02
- 情勢/社会
公明新聞:2015年10月2日(金)付
新たに選挙権を得る高校生が、主体的に政治に参加できるきっかけとしたい。
来夏の参院選から選挙権年齢が18歳以上に引き下げられることを踏まえ、文部科学省と総務省は高校生向けに、政治意識を高めるための主権者教育で使う副教材を公表した。この教材は、高校生が選挙や投票の仕組みの基礎知識を学ぶとともに、体験型学習を通じて判断力や行動力を培うために作製された。生徒の政治に対する理解が深まるよう学校現場で大いに活用してもらいたい。
主権者教育を進める上で懸念されるのが政治的中立の問題だ。教育基本法では、政治教育の重要性を指摘する一方で、学校教育における政治的中立を求めている。このため、学校現場では政治や選挙の仕組みは教えても、実際の政治を授業で教えることを遠ざけてきた。しかし、生徒が選挙権を持つようになる以上、現実の政治課題を扱い、生徒が判断力や政治意識を養える授業を行うことが望ましい。
今回、教員向けのテキストも公表された。テキストは、「個人的な主義主張を述べることは避け、中立かつ公正な立場で生徒を指導する」よう指摘しており、教員の側も模擬投票や討論などの体験型授業を通じて多様な意見を中立公正に教える手腕を磨くことが求められる。
主権者教育が進む欧米諸国では、模擬投票や討論などの体験型学習で実際の時事問題や社会的論争を取り上げ、生徒たちは対立する意見を調整し、解決する方法を学ぶ。米国の争点学習は、教員が生徒に対して賛成・反対の指針を提供することを原則としている。各国の取り組みが体験型授業の参考になろう。
日本でも、選挙管理委員会など関係機関と連携して模擬投票や出前講座を行う学校が増えている。こうした先行事例を紹介したり、関係機関の協力を得ることで、現場の教員をサポートすることも必要ではないだろうか。
次期学習指導要領に移行する2022年までは、この教材を活用し、主権者教育の定着を図ることが現実的だ。まずは、来夏の参院選で新有権者となる生徒が戸惑うことがないような環境を整えてほしい。