eノーベル賞ラッシュ 日本の科学技術の実力示す快挙

  • 2015.10.07
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年10月7日(水)付



2日続けての快挙に列島中が沸いた。



アフリカや中南米などの寄生虫病特効薬の開発に貢献した功績で、大村智・北里大学特別栄誉教授と米ドリュー大学のウィリアム・キャンベル博士にノーベル医学生理学賞が贈られることが決まった。


途上国の公衆衛生を劇的に改善し、多くの人々を病気の危機から救った業績に心から敬意を表したい。


大村氏は、長年にわたり微生物がつくる有用な化合物を探求している。特に、1979年に発見された「エバーメクチン」は、アフリカなどの熱帯域で暮らす約10億人もの人々を、寄生虫病から救う特効薬へとつながった。


大村氏は米国の製薬大手のメルク社と共同でエバーメクチンの構造を変えた「イベルメクチン」を開発、これが、失明の原因となるオンコセルカ症(河川盲目症)や皮膚が硬く変形するリンパ系フィラリア症(象皮症)の治療に有効であることが判明した。年1回飲むだけで効く手軽さもあって、服用者は年間3億人以上との試算もある。


大村氏の研究室は有用な化学物質を探し、医薬品の開発と販売はメルク社が独占的に担う。特許は共有し、特許料が入れば研究室の人件費や設備投資に回す。今でこそ、産学連携による研究や資金調達は珍しくない日本だが、これを先取りした大村氏の先見性には脱帽するしかない。


一方、重さがないと考えられていた素粒子「ニュートリノ」に質量があることを初めて確認した梶田隆章・東京大学宇宙線研究所長とカナダの研究者がノーベル物理学賞を受賞することも6日、発表された。


物理学賞は、青色発光ダイオード(LED)の開発で日本人3人が独占した昨年に続いて最高の栄誉に輝き、日本の物理学の実力を示す格好になった。受賞ラッシュは、日本の若手研究者の励みになることはもちろんだが、子どもたちが科学に対する興味を持つきっかけになるかもしれず、手放しで喜びたい。


そして、連日の快挙は政府が成長戦略の重要な柱に据えている科学技術イノベーションの推進に弾みをつけるものとなるだけに、さらに政策を強化してもらいたい。

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