eTPP大筋合意 農業や中小企業 影響を最小限に
- 2015.10.13
- 情勢/解説
公明新聞:2015年10月12日(月)付
グローバル経済に対応した態勢をいかに整えていくか。
日米など12カ国が環太平洋連携協定(TPP)で大筋合意したのを受け、政府はTPP対策として、新市場の開拓、イノベーション(技術革新)の促進、国民の不安払拭という3点の基本方針を決定した。今後、方針に沿って国内対策を検討することになるが、まずは影響や効果を精査し、丁寧に説明してほしい。
TPPが発効すると、参加国間でモノやサービス、情報が自由に往来しやすくなる。世界の国内総生産(GDP)の約4割を占める最大の自由貿易圏が誕生する。参加国数が増えて経済的な連帯が広がれば、アジア太平洋地域の安定と発展につながることも期待される。
日本が、その巨大な市場に参加する意義は大きい。
関税が段階的に引き下げられたり撤廃されれば、消費者は食料品などの商品を安く購入でき、輸出業者は参加国向けの輸出がしやすくなるといった利点がある。その一方で、農林水産業者は安い輸入品との激しい競争を余儀なくされる。
コメや麦、牛肉・豚肉など重要5項目について、政府は影響を最小限にとどめるための方針も掲げた。今回の合意は、「例外なき関税撤廃」の対象から除外すべきとの衆参の委員会決議に沿ったものではあるが、影響を被る生産者が安心して経営できるよう具体策を早急にまとめるべきだ。
日本の農業は、生産者の高齢化や後継者不足に直面している。TPPをきっかけに、生産性や競争力の高い経営体質に転換できるような後押しが必要だ。担い手の育成や農地集約の促進、販路拡大などを前進させる機会にしていくべきである。
そのためにも、生産者の要望や意見をじっくり受け止めてもらいたい。
工業製品については、参加11カ国への輸出総額19兆円の99.9%の関税が撤廃され、海外の企業ビジネスのルールも円滑になる。中小企業がチャンスを生かすには、販路拡大に向けた支援が欠かせない。
TPPの影響は多岐に及ぶ。政府は年内にも総合的な対策を策定する方針だが、生産者への影響を最小限に抑えるよう万全を期してほしい。