e北朝鮮の拉致問題 被害者帰国へ対話と圧力さらに
- 2015.10.14
- 情勢/国際
公明新聞:2015年10月14日(水)付
北朝鮮に拉致された5人の被害者が2002年に帰国してから、15日でちょうど13年になる。
拉致被害者は、日本政府が認定しているだけでも17人に上るが、5人が帰国してから現在に至るまで、ほとんど進展がない。再会を待ち望む被害者家族らの苦しみが、これ以上長引かないよう、残り12人全員の早期帰国に向けて、政府は全力を挙げて取り組むべきである。
拉致被害者について「包括的かつ全面的な調査」の実施を北朝鮮が約束したのは昨年5月。従来よりも踏み込んだ姿勢を示したと判断し、日本政府は独自に北朝鮮に科している制裁の一部を解除した。しかし、調査期限を1年と決めたにもかかわらず、北朝鮮は調査結果を何ら報告してこない。
外交交渉における「行動対行動」の原則に基づき、解除した制裁の復活を求める声もある。その場合、政府は、日本が科す制裁が、本当に北朝鮮に対する圧力となっているのかを再度分析してほしい。
北朝鮮は、中国から日本経由で、弾道ミサイルの運搬・発射用の大型特殊車両を輸入していたが、日本はこれを阻止できなかった。北朝鮮のこうした物資調達を許してしまったことは、日本の制裁のあり方が問われる重大な問題である。
制裁による圧力を強めるにしても、外交交渉による対話を進めるにしても、北朝鮮に約束を守らせるためには、中国の協力が特に欠かせない。
北朝鮮への禁輸物資の流入を確実に食い止めるには、中国と協力して制裁を実施することが求められる。
この点で、朝鮮労働党創建70周年の祝賀行事において、北朝鮮が、悪化の一途をたどっていた中国との関係改善をしきりにアピールしていたことは、日本にとっても好機であろう。
日本は、中国をはじめ、韓国や米国とも連携を深め、国際的な圧力を強めていきながら、北朝鮮との交渉を有利に進められる環境を整えていきたい。
政府は、拉致被害者全員の早期帰国の実現に本気である強い姿勢を、あらためて北朝鮮に示すべきである。