eコラム「北斗七星」
- 2015.10.16
- 情勢/社会
公明新聞:2015年10月16日(金)付
第3次安倍改造内閣が発足すると、新聞各紙は一斉に緊急世論調査を実施した。世論調査は、国政の重要課題や国民的な関心事に対する民意を探るものであり、新内閣への国民の評価を調べるのは当然かもしれない◆しかし、こうした報道に疑問を持つ識者は少なくない。メディア史を専攻する京都大学大学院の佐藤卓己教授は、「議論を始める前に何が多数派であるかを予測値的に示されると、議論の可能性を狭めてしまう」(「現代社会再考」 水曜社)と危惧する◆メディアの政治報道や政策分析は、世論の内容を充実させ、それに必要な情報を与える、いわば民主政治のインフラ(基盤)である。世論を伝えるだけでは、責任ある主体として物足りない◆民主政治では、世論は最大限に尊重されるべきである。一方で、ポピュリズム(大衆迎合)に陥らないために、政治と世論の間には一定の緊張関係が求められるのも事実である。言論機関は、この両者の境界に目を凝らし、国民の多様な考えを伝えていく役割を担う。欧米では、世論調査を独立的に行う会社や団体があり、公表する調査結果をメディアが批判的に報道するスタイルが確立されているそうだ◆議論するための公共財である新聞は、どうあるべきか。15日から始まった新聞週間で、じっくり考えていきたい。(明)