e大学力の強化 世界的視野を養う環境整備を
- 2015.10.21
- 情勢/解説
公明新聞:2015年10月21日(水)付
近年、自然科学分野で日本人のノーベル賞受賞が相次ぎ、日本の科学研究の実力が高く評価されている。
これは、1980年から2000年ごろまでの研究が実を結んだとされる一方で、現在の学術研究の状況を危惧する声も出ている。快挙が続く今こそ、日本の学術研究と大学教育の足元を見つめ直し、世界をリードしていきたい。
今月、英国の教育専門誌が「世界大学ランキング」を発表した。それによると、東京大学が昨年の23位から43位に後退し、アジア首位の座をシンガポール国立大学に奪われたという。上位200校に入った日本の大学は、東京大学を含めてわずか2校だった。
ランキングは、各大学の教育環境や論文が引用される頻度、教員1人当たりの学生数などを基に評価されている。
中でも、後続の研究に多大な影響を与える論文の引用度について、日本の大学は大きく劣る。文部科学省の科学技術・学術政策研究所の調べでも、日本の論文発表数や世界的に注目される論文数は減少している。これは、世界の主要国でわが国だけだ。
優れた論文を作成するためには、研究環境の充実は欠かせない。政府の成長戦略でも、科学イノベーションの推進に向けて科学研究費助成事業(科研費)の拡充を掲げている。論文の質は大学の力量に直結する上、研究が進んで産業界に大きく貢献し、結果的に国力の向上にも寄与すると言っても過言ではない。支援体制を強化すべきである。
世界に通用する力を養うには、国際化の視点も強調しておきたい。ランキングでも、日本の国際度を示す評価項目の低さが際立っている。まずは、各大学で低迷している外国人教員や留学生の受け入れに本腰を入れ、学内で国際感覚を磨く土壌を育む必要があるのではないか。
併せて、世界に目を向ける取り組みも加速化させたい。例えば、引用度の高い国際共著論文は、世界的に増加傾向にあるが、日本は非常に少ない。また、海外に研究派遣される研究者数も減少している。帰国後のポストへの不安などが背景とされるが、将来を担う若者が学問に取り組める環境を構築しなければ、国際社会では優位に立てない。