e労働紛争の解決制度 安易な解雇抑止する視点堅持を
- 2015.10.28
- 情勢/解説
公明新聞:2015年10月28日(水)付
解雇や職場でのいじめなど個別の労働紛争の解決手段はどうあるべきか。厚生労働省の検討会が29日に初会合を開き、議論をスタートさせる。
検討会には、労使の代表者らが参加する。労働紛争の円滑な解決に向け、労使双方が納得できる方策を探ってもらいたい。
労働紛争には、都道府県労働局などによる「あっせん」や、裁判所での「労働審判」「訴訟」といった解決手段がある。あっせん制度は紛争調整委員会が具体的なあっせん案を提示するもので、利用しやすい半面、あっせんに応じさせる強制力はない。そのためか解決率は約4割にとどまり、労働者に支払われる解決金は低額で決着しがちだ。
労働者の権利を守る視点から、使いやすい仕組みに改善してもらいたい。
裁判所で行われる労働審判や訴訟は、解決まで多くの時間がかかるため、不当と思われる解雇であっても、泣き寝入りを余儀なくされる労働者は多い。
検討会は訴訟で「解雇無効」となった場合、金銭補償での解決をめざす制度についても議論するという。
解雇の無効判決が出ると、雇用契約の継続が確認され、職場復帰への道が開かれるのが原則だ。だが、崩れてしまった労使双方の信頼関係が回復せず、実際には復帰が難しいケースは珍しくない。
金銭補償のルール整備は、労働者にとって解決手段の選択肢が広がるが、労働組合からは、「企業が金銭さえ支払えば解雇しやすくなる」と不安視する声が出ている。制度が悪用されないことを担保する対策が欠かせない。
労働契約法は、客観的に合理的な理由のない解雇は無効と定めている。経営の悪化による整理解雇の場合でも、企業に解雇回避の努力義務などの厳しい4条件が課されている。厚労省は、検討会の議論について、解雇自体に関するルールに何ら変更を加えるものではない、との立場を崩していない。安易な解雇を抑止する視点は堅持すべきである。
全国の労働相談件数は7年連続で100万件を超えている。公正かつ迅速な解決手段を整え、安心して働けるルールづくりを進めてほしい。