e「海側遮水壁」完成 汚染水流出阻止へ対策さらに

  • 2015.10.30
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年10月30日(金)付



東京電力福島第1原子力発電所で、放射性物質に汚染された地下水の海洋流出を防ぐ「海側遮水壁」が完成した。


シビア・アクシデント(過酷事故)の発生から4年7カ月余り、試行錯誤を繰り返してきた汚染水対策は、重要設備の完成で大きな節目を迎えたことになる。


国と東電は万全の態勢で成果を積み重ね、福島の漁業再開と風評払拭、さらには最終目標である廃炉と福島再生への歩みを加速させてもらいたい。そのためにも、どのような些細なミスも許されぬことを改めて肝に銘じてほしい。


遮水壁は全長約780メートル。1~4号機の原発建屋近くの護岸に、直径約1.1メートル、長さ約20~30メートルの鋼管594本を垂直に打ち込んで造った。


東電の推計では、これまで1日あたり約400トン流れ出ていた汚染地下水は10トン程度にまで減少。放射性物質の量も、その種類によって40分の1から15分の1まで低減できる見通しだ。


海側遮水壁は、▼原発敷地に流れ込む地下水の量を減らす「地下水バイパス計画」▼建屋周辺の汚染地下水をくみ上げて浄化後に海洋放出する「サブドレン計画」▼建屋周囲の地盤を凍らせて建屋内への地下水流入そのものを抑える「凍土遮水壁」―などと並ぶ汚染水対策の柱である。


このうち地下水バイパスとサブドレンの両計画は既に実施されている。今回、海側遮水壁も完成したことで、汚染水対策の焦点は凍土遮水壁の運用に移ることになる。


東電によると、凍土遮水壁は一部で試験凍結をしているが、本格凍結には至っていない。凍土壁で建屋周辺の地下水が低下し、建屋内の高濃度汚染水が外に漏れ出す危険性があるためだ。原子力規制委員会も「地下水の水位を安定管理できる具体策の提示」を認可の前提としている。


その意味でも、海側遮水壁完成の意義は大きい。想定通りに機能すれば、汚染地下水の海洋流出を大幅に減らすだけでなく、地下水の変動に関するデータの詳細な試算と分析も可能だからだ。


東電はもちろん、国や民間の研究機関なども積極的に関与し、海側遮水壁による汚染水対策の前進に全力を注いでもらいたい。

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