e公共図書館 「知の拠点」にふさわしい場所に

  • 2015.11.02
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年10月31日(土)付



読書の季節である。読書週間(11月9日まで)も始まり、本との出会いを求めて地域の図書館を訪れようと考えている人もいるのではないか。


昨今、日本人の活字離れを懸念する声は多いが、意外にも、公共図書館の利用は活発だ。文部科学省の調査によると、図書館数や本の貸し出し数、貸し出しを受けた人数がいずれも増え続けている。


各図書館の利用促進に向けた工夫も目立つ。深夜や日曜・祝日の開館だけでなく、コンビニ返却など、サービス向上の試みもある。また、全国に約3200ある公立図書館のうち、窓口業務や資料管理など、何らかの形で民間などに委託しているところは約400に上る。こうした中、愛知県小牧市で、レンタル大手を手掛ける企業に市立図書館の運営を委託する計画が、住民投票で反対多数となった。


この企業が運営する佐賀県武雄市の図書館は、斬新な施設デザインやカフェを採用。従来のイメージを一新し利用者を大きく増やしたが、古い実用書や地域と無関係な図書を購入するなど、選書のあり方に疑問の声が上がった。こうした点が小牧市の投票結果に影響したとの見方もある。


民間の柔軟な運営手法で、図書館が充実することについては、評価の声は少なくない。ただ、今回の小牧市民の意思表示は、民間任せでは必ずしも住民の理解が得られないことを示していよう。図書館の役割について改めて考える契機と捉えるべきではないか。


図書館に課せられた大きな使命は、住民が必要とする本や資料を保存し、提供することだ。その実現には、一過性ではなく長期的な視点で選書する姿勢が必要である。


地域の「知の拠点」として、その地域の歴史や文化に関する資料を収集する役割も重要だ。専門的な情報の蓄積は地域活性化にもつながる。


実際に、商工会議所などと連携して起業や商品開発支援を行ったり、がんに関する資料をそろえて啓発に力を入れるなど、住民生活の向上に貢献しているところもある。


司書数や書籍の購入に充てる資料費は年々減少している。厳しい財政下にある自治体も多いが、知恵を絞り、図書館を支える体制の充実へ、努力を続けてほしい。

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ