e認知症を地域で支える
- 2015.11.16
- 情勢/社会
公明新聞:2015年11月15日(日)付
「サポーター」10年で660万人突破
養成講座 理解深め、応援者に
高齢化の進展に伴い、認知症の人が住み慣れた地域で安心して暮らせる環境づくりが急がれています。政府が国家戦略として取り組む中、認知症について正しく理解し、認知症の人と家族を支援する「認知症サポーター」が、事業開始10年で660万人を突破しました。公明党も政策を提言し、各地で養成を積極的に推進。山口那津男代表もサポーターです。養成講座の模様を中心に取り組みを紹介します。
声掛けなど接し方学ぶ
「認知症を正しく理解し、認知症の人や家族の応援者になってください」。10日、埼玉県熊谷市で開かれた同県主催の認知症サポーター養成講座。冒頭、講師を務める「認知症の人と家族の会」埼玉県支部の岩田知子さんが呼び掛けました。
この日は97人が参加。講座では、認知症の基礎知識を学ぶ映像を視聴し、県作成のテキストに沿って岩田さんが説明を加えていきます。参加者は、家族の介護も経験し、介護施設で働く岩田さんの実体験を交えた話に聞き入っていました。
講座の中では、認知症の人への接し方として、買い物で困っていたら小銭を数えてあげたり、道に迷っているようであれば自宅まで送ってあげたりするなど、「困った人」ではなく「困っている人」として対応する大切さが紹介されました。声を掛けるポイントも、「正面から、同じ目線で、優しく」と指摘、実際に参加者同士で行ってみました。岩田さんは、認知症の人に見られる不安や焦燥感といった行動・心理症状について、「私たちの関わり方によって解消することができる。それを理解し支えてほしい」と強調しています。
一方、県内の各地域では、認知症サポーターらが中心となり、認知症徘徊者への声掛けなどを想定した模擬訓練も広がっています。
講座で学んだ知識は実際の介護現場で大いに役立っています。
都内に住むAさん(40代の女性)の母親(80代)に認知症の症状が出始めたのは、今から5年前。「お財布が無い」と騒ぎ、一緒に夜通し探すこともありました。幸いにも、症状の初期段階から病院で診察を受けることができましたが、「認知症の人への具体的な接し方を教えてくれるわけではなく、孤独で心細かった」そうです。
その中で今年2月、Aさんは地元の講座に参加。「寄り添う気持ちで親に接してきましたが、このやり方でいいのか分からず、正直不安でした。講座を通し、介護への自信と安心感を持てるようになりました」と感想を語っています。
金融機関や商店で高まるニーズ。学校での学習も
2012年に462万人だった認知症高齢者数は、全ての団塊の世代が75歳以上となる25年には、約700万人に達すると想定されています。こうした中、サポーターの養成講座が各地に広がっています。これは、厚生労働省の「認知症サポーターキャラバン」事業として05年度から行われているもので、自治体や企業などで実施されています。
同事業では、認知症サポーターを養成・育成する講師役の「キャラバン・メイト」も併せて養成。認知症サポーターとキャラバン・メイトは合わせて全国に約668万人(今年9月末時点)。17年度末までに800万人をめざしています。
サポーターの増加により、認知症の早期発見・早期治療が高まると注目されています。例えば、65歳以上の高齢者1人に対して、約2人のサポーターがいる福井県若狭町。県内の他の自治体と比べ、認知症の初期段階における初診率が高いことが判明しました。
認知症の正しい知識を身に付けるサポーターが増える一方で、実際に認知症の人を手助けするサポーターを増やすことも大切です。全国キャラバン・メイト連絡協議会の菅原弘子事務局長は、「日常的に手助けするサポーターがいるまちを各地に広げていきたい」と語っています。
また、サポーターは、社会福祉士などの専門的な職種だけでなく、金融機関や商店など、幅広い職種からもニーズが高まっています。例えば、金融機関の窓口業務の職員がサポーターであれば、認知症の人の振り込め詐欺被害などを防ぐことも期待されます。このほか、学校現場での養成講座も各地で行われています。
現場に根差す公明議員に期待
東京都医学総合研究所
西田 淳志 副参事研究員
日本でこれだけ多くの人が認知症に関心を持ち、社会的にサポートする意欲を持っていること自体、大きな成果で、国際的に高い評価を受けています。
認知症ケアは、国で細かい方針を出しても地域の実情に合わないことが多い状況です。そこで、英国では、認知症ケアの国家戦略を打ち出すとともに、特にモデルとなるような地域の実践・提案に対し、国が積極的に予算を投入しています。
日本では今後、認知症サポーターが自発能動的に地域づくりに関わっていくことが大事です。
現場に根差し、国・地方に強固な議員ネットワークがある公明党には、党内に認知症ケアを恒常的に考える組織体を設け、地域単位で認知症当事者と介護側双方のニーズを把握してほしい。先駆的な事例を吸い上げ、全国に共有できる仕組みを築いていくことを期待しています。