eなぜ軽減税率が必要か

  • 2015.11.16
  • 情勢/経済

公明新聞:2015年11月15日(日)付


京都女子大学客員教授 橘木 俊詔氏に聞く 
有効な低所得者対策


消費税の軽減税率をめぐる与党協議が本格化している。そこで、軽減税率の有効性などについて、京都女子大学の橘木俊詔客員教授に聞いた。


―なぜ、軽減税率が必要なのですか。


橘木俊詔・京都女子大学客員教授 消費税には低所得者ほど負担感が重くなる逆進性という課題を抱えています。低所得者は、高所得者に比べ、所得のうち飲食料品の購入に充てる支出の割合が高くなります。その負担感を軽くするために必要なのが軽減税率です。


欧州をはじめ多くの国で軽減税率が採用されている現状を考えれば、日本でも2017年4月の消費税率10%への引き上げと同時に導入するのが当然でしょう。


―軽減税率は高所得者にも恩恵が及ぶという指摘がありますが。


橘木 飲食料品を例に挙げれば、「購入額」は高所得者の方が多いので、消費税を軽くすると富裕層に有利に見えます。しかし、所得に占める飲食料品の「購入率」では、低所得者の方が高いため、軽減税率は低所得者対策として有効です。私は、購入額よりも購入率を重視すべきだと考えます。


―給付つき税額控除も低所得者対策の選択肢の一つに挙げられています。


給付制度の申請率は高くない


橘木 給付つき税額控除は、個人の所得を正確に把握して初めて機能する制度ですが、まだ日本では、それができません。また、給付を受けるには、給付を申請する手続きをしなければならず、利用者にとって大きな負担になります。


これまで低所得者対策として実施されてきた給付制度に対する申請率は高いとはいえず、これを放置すれば、対象者間で不公平が生じます。一方、軽減税率は、手続きなしで購入時に誰もが恩恵を受けられる点で望ましい政策です。


―軽減税率の対象品目をどう設定すべきですか。


橘木 飲食料品の中で対象品目の線引きをするのは困難です。適用を求める業界団体からの政治圧力がかかり、議論が収拾つかなくなる恐れがあります。だからこそ、「酒類を除いた飲食料品」を対象にするのが単純明快で公平です。財源については、所得税の見直しなど税制全体で賄ってもいいのではないでしょうか。


―事業者の事務負担が増えることについて。


日本にふさわしい仕組みに


橘木 長期的には、インボイス(商品ごとの税率や税額を記す伝票)制度を導入するのが理想です。そうしなければ、益税(国に納めるべき消費税が事業者の手元に残る利益)が増えるなど事業者間で不公平感が生じます。


すでにインボイスが機能している欧州の事例を研究し、日本にふさわしい制度をつくらなければなりません。自民党との協議をまとめ、軽減税率が確実に導入できるよう公明党にエールを送りたい。

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