eメディア・リテラシー 内容の冷静な読み解きが必要
- 2015.11.18
- 情勢/解説
公明新聞:2015年11月18日(水)付
テレビやインターネットを通じて手軽に大量の情報が手に入るようになった現代、身の回りにあふれる情報を正しく理解し、活用する能力(メディア・リテラシー)が問われている。情報を判断する基準の一つは発信源の確かさだが、時には公的機関の発表も冷静に読み解く必要がある。
世界保健機関(WHO)の専門組織である国際がん研究機関が先月、「ベーコンやソーセージなどの加工肉は人にとって発がん性がある」と発表し、不安感が広がったのはその一例だ。同調査では、加工肉を毎日50グラム(ソーセージ2~3本程度)食べると、大腸がんになるリスクが18%増えるなどと指摘していた。
この発表直後の数日間でウインナーの販売が2割ほど落ち込んだ食品メーカーもあった。海外でも消費者の不安が広がり、WHOは「加工肉を食べないよう要請するものではない」との声明を出すなど沈静化に追われ、結局、あまり過敏にならずバランスの良い食事を心がけることが肝要という結論に落ち着いた。
一方、先ごろ、国連の特別報告者が記者会見で「日本の女子生徒の13%が援助交際を経験している」と発言。外務省が数字の根拠を示すよう抗議すると、報告者は「裏付ける公的かつ最近のデータはない」と認めた。いずれも衝撃的な内容だが、科学的根拠や調査方法に疑問符が付く。
こうした情報に接したとき「本当にそうなのか?」と、一度立ち止まって考えることが必要だ。誰もがブログやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で自由に情報を発信できる。そのことで、自らが誤った理解のまま虚偽の情報を広げてしまう可能性も高まっているのだ。
東日本大震災の際には「石油コンビナートが爆発したので有害物質を含んだ雨が降る」などのデマ情報がSNSで飛び交ったこともある。有益で緊急性のある内容だと信じて情報を拡散した人も多かっただろうが、結果として混乱を深めるだけだった。
メディア・リテラシーを養うためによく用いられている方法は、情報を発信する側の視点に立つことだ。注目を集めるために過剰な表現をしていないかを見極め、情報を精査する姿勢が求められる。