e住民訴訟の改正論議 公金支出と首長の責任が争点

  • 2015.11.20
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年11月20日(金)付



地方自治体に違法な公金支出があった場合、市長など首長や職員に対し、個人として損害賠償責任を負わせる住民訴訟の制度がある。住民が地方自治をチェックするための重要な仕組みだ。


しかし、首長個人では到底支払えない数億円の損害賠償額が裁判で確定したり、裁判の係争中であるにもかかわらず、地方議会が首長に対する損害賠償請求権を自ら放棄して首長を助ける例が近年続いた。


この問題について検討を重ねてきた政府は、このほど見直し案を公表した。そのポイントは、係争中に議会が議決によって賠償請求権を放棄できないようにし、議決をするなら判決確定後に監査委員の意見を聞いた上で行うように法改正をする。


裁判で違法と確定した後に議会が首長の免責を議決することは、住民の批判によって困難になるとの考え方だ。


政府は来年の通常国会で法改正をめざすが、個人の責任追及を通して財務の適正化をめざす住民訴訟の目的にかなった改正論議を求めたい。


現行制度では訴訟提起の前に住民監査請求をすることが条件となっているが、公金支出を違法と考える住民なら誰でも住民訴訟で司法の判断を求めることができる。裁判所が公金支出を違法と判断した場合、違法行為により生じた自治体の損害を補てんするため、首長個人に対して損害賠償請求をするよう自治体に命じる判決を言い渡す。


原告の住民は公益の代表者という立場であり、原告住民が損害賠償を受けられるわけではなく、住民による地方自治監視の仕組みだ。


住民訴訟の見直しに関する政府内の議論では、損害賠償額の上限を決めたり、損害賠償責任を認める要件を現在の「故意または過失」から「故意または重過失」とし、軽過失の場合の責任は問わないことも提起された。ここには、過度の責任追及は、創意工夫をして積極的に行政を進めることを期待されている首長や職員を萎縮させてしまうとの配慮がある。


これに対し、首長の責任軽減は自治体財政を危うくするとの市民団体や研究者の声もある。あるべき地方自治を見越した議論が期待される。

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