eコラム「北斗七星」
- 2015.11.27
- 情勢/社会
公明新聞:2015年11月27日(金)付
以前、取材で知り合ったドイツ人政治学者と7年ぶりに会った。「政治に疲れるドイツの有権者」と題する小論を『月刊公明』に寄稿してくれたこともある。帰国後、大学で教壇に立ち、今回来日、「自国の政党機関紙と比較したいから」と、公明新聞を訪ねてきた◆欧州連合(EU)をけん引し、国民の人気も高いメルケル首相の支持率が急落するなど、難民問題で揺れるドイツの政治状況が話題になった◆同首相は、シリア難民の積極的な受け入れを表明しているが、批判も多い。これまで、難民の増加による財政負担や、雇用、福祉など、自国民の生活への影響が指摘されてきたが、今回、難民を装った実行犯によるパリの同時多発テロ事件で、国民の不安は高まった。一方、極右政党の支持率は急伸している◆開かれた自由の国、米国でも、オバマ大統領が示したシリア難民の受け入れ計画に反対する州知事が半数以上にのぼる。先進民主主義国で、政治指導者の苦悩は続く。国際社会で責任を果たそうとしても、国内で支持されるとは限らず、次の選挙で政権を失うことさえある◆国益を考え、政府与党が議論を重ねた結論が、人々にどう受け入れられるか。環太平洋連携協定(TPP)や消費税、平和安全法制など、理解を得るための取り組みを丁寧に続けたい。(山)