e現地リポート 話題呼ぶ「公民戦略連携デスク」
- 2015.11.30
- 情勢/社会
公明新聞:2015年11月30日(月)付
企業と行政のニーズをマッチング
予算ゼロで進むセーフティーネット
大阪府
大阪府が4月に開設した新しい行政組織「公民戦略連携デスク」が注目を集めている。人口減少で税収が減り、行政が予算を確保して施策を充実させることが難しい時代の中、社会貢献に意欲を示す民間企業と府庁内の各部局のニーズをマッチングさせた共同事業を次々と展開。高齢者雇用の促進やニートの職場体験、認知症高齢者の見守り体制など、予算を掛けずに大きな成果を挙げている。自ら動きアイデアを提案する"ワンストップ窓口"として奮闘する同デスクの取り組みを追った。=関西支局
コンビニとタイアップ シニア雇用50人に
"生みの親"は公明府議
認知症の見守りやニート就労も
大阪市中央区の府庁本館4階にある公民戦略連携デスク。専属のスタッフは5人。東口勝宏チーフプロデューサー(CP)を中心に連日、企業と各部局の橋渡しに飛び回る。10月末時点で訪問した企業数は100社を超え、提携協議の大詰めでは同じ会社の担当者と20回以上もやりとりをしてきた。
同デスクが最初に手がけたのは、高齢者の雇用促進。きっかけは、商工労働部から寄せられた「シニアの雇用が遅々として進まない」との悩み相談だった。
そんな現状を聞き東口CPは、コンビニ大手のセブン―イレブン・ジャパンとの話し合いで、高齢者が利用しやすいコンビニへのイメージチェンジを模索していたことを思い出し、府の担当職員と共に同社関西ゾーンの責任者と交渉を開始。府とタイアップしたシニアのための就職説明会の共催を持ち掛けたところ、提携が実現。「夏以降、府内40カ所以上で説明会が行われ、どの会場も事前の参加予約をはるかに上回る応募者が集まった」(セブン―イレブン・ジャパン関西ゾーンの黒瀬陽一総務担当マネジャー)。その後、店舗ごとの面接が行われ、府内で約50人のシニアが採用され働いている。
「接客が大好き。働くことが楽しい」と語るのは、大阪府吹田市竹見台のセブン―イレブンでパートで働く青木博子さん(66)。今回のシニア枠で採用された一人だ。「長年、和食レストランで接客係のチーフを務めていただけに説明会でも輝いていた」(黒瀬氏)。当初、青木さんにはコンビニのバイトは「若者が働く場所」「仕事がきつい」などのイメージがあったが、「大阪府がタイアップしていることで、"ブラック"なことはないだろうと安心できた」と言う。
今回の提携事業は、働きたいシニアに職場を、人手不足で悩むオーナー側に安心を与えた。また、セブン―イレブン本社側にとっても、「府とコラボして社会貢献する企業」というイメージアップが進み、シニアの雇用を促進したい行政にも、予算を投入しなくても施策を充実させた不思議な達成感をもたらした。
銀行と包括協定結び中小企業振興も
公民戦略連携デスクが次に着手したのは、総合スーパー・イオンの協力を得て、ニートの若者2人に3週間にわたって職場体験をしてもらう事業だ。事業提携に至る交渉では、ニートのサポート活動をしているNPO法人に協力してもらい、ニートの若者の特性や集中力の高さなどの話をすることで、イオン側の人事担当者の不安を解消。比較的静かな文房具売り場での品揃え体験やサポートの先輩職員を付けるなどの工夫も重ねた。その結果、ニートだった若者2人の働きぶりが認められ、イオンでの就職が決まったという。
ほかにも、府内約3500店舗を誇る大手コンビニ4社と協定を結び、街を徘徊する高齢者の見守り事業も開始。各店舗の店長らが認知症の人の見分け方を学んで「認知症サポーター」に順次なってもらう計画だ。さらに、りそな銀行と連携し、中国・上海に進出する中小企業の資金繰りなどの相談に、同銀行の経験豊富な人材を府の上海事務所に常駐させて対応する包括協定も実現した。
府議会公明党の八重樫善幸議員はこれまで、総務委員会の質疑を通して、「少子高齢化や人口減少で税収が下がる中、これからの行政は公民連携で進めていくことが重要だ」と一貫して主張。こうした発言に着目した府財務部や行政管理監が今年2月、行財政改革推進プラン(2015~17年度)の策定に当たり、「公民戦略連携デスク」の創設を盛り込んだ。「府議会での質疑の過程でいろいろなアイデアを頂いた。公民連携デスクの生みの親は、公明党だ」(東口CP)。