e人民元の国際化 中国は金融制度改革を進めよ
- 2015.12.04
- 情勢/経済
公明新聞:2015年12月4日(金)付
中国の通貨・人民元が、米国のドル、欧州連合(EU)のユーロ、日本の円、英国のポンドに並ぶ国際主要通貨の一つになる。
国際主要通貨とは、国際通貨基金(IMF)が非常時に備えて創出した「特別引き出し権(SDR)」と呼ばれる資産を構成する通貨である。
IMFは、188の加盟国に、出資比率に応じてSDRを配分している。加盟国が、通貨危機などで対外的な支払いに充てるための外資不足に陥った場合、SDRをドルや円などと交換できる。
IMFは先月末、人民元をSDRの構成通貨に加えることを決めた。中国は、この国際的な地位にふさわしい責任を果たしてもらいたい。
特に、中国政府は、人民元による取引をいまだに厳しく規制しており、各国の企業や投資家は、人民元の使い勝手が悪いと感じている。
例えば、中国では投機的な取引を制限するため、お金を自由に海外から持ち込んだり、海外に持ち出したりすることができない。人民元と外貨の両替や国境を越える送金も、原則として認められていない。
このため、中国に直接投資を行う場合、その都度、必要な資金計画を中国の当局に提出し、許可を受けなければならない。
また、人民元の為替レートでも、「基準値」(対ドル)と呼ばれる中国独自の取引の目安を日ごとに定めている。中国は、自国企業の輸出を後押しするため、基準値を意図的に引き下げ、人民元安を誘導しているのではないかとの懸念も根強くある。
とはいえ、人民元を国際主要通貨と決めたことは、「中国経済を国際金融システムに統合する重要な節目」(IMFのラガルド専務理事)であり、その意義は大きい。
中国に、国際金融秩序におけるルールを守るよう促し、取引の自由化に向けた金融制度改革を一層進めていくよう、国際社会が後押ししていくことが必要である。
今後、人民元の国際取引での使用量が増えていくと予想される。日本も、人民元で決済ができる銀行の国内設置などを進め、人民元の勢いを自国の経済の活性化に取り込んでいくべきである。