e血液製剤の不正 利益優先の腐敗体質なぜ続く
- 2015.12.07
- 情勢/解説
公明新聞:2015年12月5日(土)付
人の命よりも企業の利益を優先させる不正行為がまた一つ明らかになった。
血液製剤やワクチンの国内大手メーカーである「化学及血清療法研究所」(化血研)が約40年にわたって国の承認を得ていない方法で製品を作り、その事実を組織ぐるみで隠し続けていたことが第三者委員会の調査で分かった。
化血研は、不正が明るみに出るのを防ぐため虚偽の製造記録を作成し、国の検査でも偽装工作を繰り返してきたという。記録書類に紫外線を当てて変色させ、作成時期を古く見せるなど手口は巧妙で悪質さが際立つ。第三者委員会が「常軌を逸した隠蔽体質」と批判するのは当然だ。
今回の不正は、医薬品の有効性や安全性を確保する国の承認制度の根幹を揺るがしかねない。製造方法の変更を申請することで生産に遅れが出るのを嫌い、隠蔽を続けた化血研について報告書は「患者を軽視し、企業の利益を優先させる姿勢が強くうかがえる」と腐敗ぶりを指摘した。
化血研は、薬害エイズ訴訟の被告企業の一つで、1996年の和解時には「悲惨な事故を再び発生させないよう最大の努力を重ねる」と約束したが、その裏では不正や偽装を続けていたことになる。化血研はまず、元原告らに謝罪と説明をすべきだ。
未承認の製法で作られた製品に致命的な安全上の問題は確認されなかったというが、本当にそうなのか患者は不安に思うだろう。副作用が出ていないかなど、責任を持って患者の健康状態の確認を急ぐ必要がある。不正を見抜けなかった厚生労働省の監督責任も小さくない。抜本的に検査方法を見直してもらいたい。
昨年から今年にかけて、大手企業の人命軽視とも取れる不祥事が続く。自動車部品大手のタカタが、自社製エアバッグの破裂事故で適切なリコール(回収・無償修理)と情報開示を行わなかった問題や、旭化成建材による杭打ち工事の施行データ不正問題などは代表例だ。
企業の法令順守が厳しく問われる今、一つの不祥事で信用が失墜し、市場からの退場を余儀なくされるケースもある。目先の利益だけを追いかけ、消費者をないがしろにする企業に将来の発展はない。