e子どもの貧困 社会にも大きな損失、対策急げ
- 2015.12.08
- 情勢/解説
公明新聞:2015年12月8日(火)付
子どもの貧困は、子どもの将来に大きな影響を及ぼすが、子ども本人だけでなく社会全体にとっても大きな損失をもたらす。この危機感を共有する必要がある。
公益財団法人の日本財団が、現在15歳の子どものうち、生活保護世帯や児童養護施設、ひとり親家庭の子どもに教育支援などを行わなかった場合、社会が被る経済的損失は2.9兆円に上り、政府の財政負担は1.1兆円増えるとの試算を発表した。
子どもの貧困によって生じる社会的影響が、数値で示されたのは初めてという。
厚生労働省の調査では、平均的な所得の半分を下回る世帯の子どもの割合を示す「子どもの貧困率」が、16.3%と過去最悪を更新、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で極めて高い水準にある。
貧困によって満足な教育が受けられず、進学や就職のチャンスを広げられなければ、生まれ育った家庭と同様に困窮に直面する「貧困の連鎖」が繰り返される。
今回の試算は1学年のみが対象だ。全ての年齢やこれから貧困家庭に生まれてくる子どもたちを考慮すれば、社会への影響は甚大である。少子高齢化に伴って労働人口の減少が懸念される中、企業の人材や将来の社会保障の担い手不足に拍車が掛かるような事態は避けなければならない。
折しも政府は、「1億総活躍社会」の実現に向け、ひとり親家庭に対する児童扶養手当の拡充や子どもの学習支援の強化などを盛り込んだ緊急対策を発表した。子どもの貧困対策に欠かせない内容ばかりだが、その多くは、公明党の提案が反映されたものである。
海外でも、子どもの貧困対策に力を入れている。イギリスでは「シュアスタート」と呼ばれる取り組みで、行政やNGOなどが協力して子育て相談や児童手当の支給手続き、親自身の就労支援などを総合的に行っている。支援内容は地域の実情に合わせて決定され、孤立しがちな貧困家庭の親や子どもの居場所としての役割も担っている。
子どもの貧困は、個人の問題と捉えられがちだが、日本の未来を左右する重要な課題でもある。政府や自治体は、早急に支援を強化してもらいたい。