eWHOが初の報告書 国際協調で汚染食品被害防げ

  • 2015.12.09
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年12月9日(水)付



世界保健機関(WHO)は今月、病原菌や化学物質などに汚染された食品による健康被害についての報告書を初めて発表した。


食中毒による世界全体の健康被害の状況が明らかになったことで、国際社会が一致して、食の安全対策を一層強化していくことが求められている。


報告書によると、毎年、全世界の人口の10分の1に当たる約6億人が食中毒にかかり、このうち42万人が死亡しているという。


食中毒を引き起こす病原菌や化学物質は、吐き気や下痢、嘔吐などの一過性の症状を引き起こすだけでなく、長期的に見ると、腎臓や肝臓不全、がんや脳神経障害につながる危険性をはらんでいると報告書は警告している。


日本では、食中毒による死者はほとんどいないとはいえ、鶏や牛、豚の腸内に生息するカンピロバクター菌による食中毒患者が特に多いことが報告書で指摘されている。


少量でも体内に入れば腸炎を発症し、最悪、筋肉を動かす運動神経の障害により手足に力が入らなくなるギラン・バレー症候群を引き起こすこともある。この菌により、国内で毎年、2000~3000人の食中毒患者が出ているという。


食中毒による健康被害を防ぐには、国内の農林水産物や食品が病原菌などに汚染されていないかチェックするのはもちろんのこと、日本に食品を輸出する国々の食品の安全にも目を配る必要がある。


米国では9月に、メキシコから輸入したキュウリに食中毒の原因となるサルモネラ菌が含まれていて、341人が体調を崩し、2人が死亡した。食品の多くを輸入する日本も他人事ではない。


とはいえ、食品に含まれる汚染物質や残留農薬などをめぐる安全性に関する各国の基準はバラバラであり、輸入食品が日本の基準に適合し、安全であるかどうか判断するのは難しいのが現状だ。


今回のWHOの報告をきっかけに、汚染食品の問題の深刻さを各国が認識し、食品の安全についての統一した基準づくりを進めていくことが重要である。各国と比べて厳格な基準を持つ日本がリード役を果たしていきたい。

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ