eコラム「北斗七星」
- 2015.12.11
- 情勢/社会
公明新聞:2015年12月11日(金)付
眼前に広がる銀世界。雪が積もると、近所の坂道でスキーに興じた。故郷の秋田を離れて38年。今も蘇る光景である。そんな記憶も「記録」として残るだけかもしれない◆カナダのウォータールー大学が昨年、ある研究結果を公表した。地球温暖化がこのまま進むと、冬季五輪を開催した19都市中、2080年代にスキー競技を確実に運営できるのは札幌など6都市だけになるというのだ。影響は五輪に限らない◆最も顕著に表れる北極圏では、既に気温上昇は世界平均の2倍の速度で進行。夏の海氷面積は従来の3分の2となり、島しょ国は国土水没の危機に。日本では爆弾低気圧が多発。ほぼ60年後には、伊勢湾台風より気圧が低いスーパー台風が直撃するとの予測も現実味を帯びつつある◆国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)が現地・パリで11日、会期末を迎える。温室効果ガスの二大排出国の中・米両国と、先進国、島しょ国、産業革命以降の温暖化の責任は先進国にあるとする発展途上国らの思惑が交錯。"複雑な連立方程式"を解く作業が続いている◆複数案が併記される中、温暖化の抑制へ実効性ある枠組みは成るのか。「志ある者は事竟に成る」(十八史略)である。各国は志を共有し応戦を誓ったはずだ。かつての地球を記録の中の存在だけにしてはならない。(田)