e二重住宅ローン救済

  • 2015.12.28
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年12月26日(土)付



災害の増加に備え、対策急げ



近年被害が激甚化している豪雨や雪害といった自然災害に備えるため、政府は、効果的な防災対策を検討する第1回有識者会議を24日開催した。会議は今後の防災対策のあり方を幅広く検討し、提言としてまとめる。東日本大震災の被災者が抱えたことで知られる「二重住宅ローン」についても、議論が深まることを期待したい。


二重ローンを抱えると、自然災害の被災者が住宅を再建する際、被災する前の住宅のローンに加え、新たに組むローンによって多額の返済負担を負い、家計が行き詰まってしまう。大震災の被災者を法律面から支援した日本弁護士連合会は当時、少なくとも1万人以上がこの問題に直面したとみる。


大震災による二重ローン対策としては、政府が設けた「個人版私的整理ガイドライン(指針)」が効果を発揮している。これにより、被災者は破産手続きなしで震災前に借りた借入金の減額または免除の交渉が債権者との間で可能になった。ただ、大震災を受けて急きょまとめられたため、ガイドラインに法的拘束力はなく、全ての債権者の同意が必要など利用するためのハードルは低くない。また、ガイドラインは東日本大震災の被災者のみが対象である。


こうした中、9月に発生した東日本豪雨による鬼怒川の決壊では、茨城県常総市だけで全壊を含む8000棟以上の住宅が被害を受けた。今後も同様の大規模災害の発生が懸念されており、二重ローンに苦しむ新たな被災者を出さないための恒久的な救済策の確立を急ぐべきではないか。


現在、全国銀行協会を中心に法務省なども参加し、全ての自然災害を対象に、被災者を二重ローンから救済するための全国共通ルールの論議が進められている。


1995年の阪神淡路大震災で二重ローンを抱えた被災者の中には、救済策が整っていなかったため、20年たった今も生活再建が十分ではないケースもある。ガイドラインは国が恒久的な制度を検討する際には貴重な参考となるだろう。共通ルールは来年度からの適用をめざしているが、被災者の立場に立った使い勝手の良いルールの整備を求めたい。

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