e自公政権復帰から3年
- 2016.01.05
- 情勢/社会
公明新聞:2016年1月5日(火)付
田﨑史郎・時事通信社特別解説委員に聞く
自民、公明両党が、2012年12月に民主党から政権を奪還して3年余が経った。自公連立政権の3年間はどうだったのか。今後の行方はどうなるのか。長年、政治の最前線で取材を重ねてきた田﨑史郎・時事通信社特別解説委員に聞いた。
政権運営
政治を前に進めたことは評価。両党には協力の岩盤があり揺らぎは支障ない
―自公両党が政権復帰してから3年経った。これまでの政権運営をどう見るか。
田﨑史郎・時事通信社特別解説委員 基本的に評価している。自公政権は、平和安全法制や消費税の軽減税率の問題など、さまざまな政治課題を互いに譲り合って乗り切っている。それは、両党の地方組織まで協力し合う関係が築かれていることが大きい。協力の岩盤があるので、多少の揺らぎがあっても政権運営に支障がないだろう。
政権に復帰するまでの野党時代、自公の協力関係が崩れなかったことも大きい。良好な関係を説明する際に政治の決定権を持つ「権力側にいるから」との指摘があるが、権力を持たなかった野党時代も協力し合っていた。それは、議員同士の人間関係が強かったからだと思う。
―民主党政権時代とどう変わったか。
田﨑 民主党政権時代は政治が全般的に不安定だった。自公政権はきちんと政治を前に進めている。
民主党政権で一番駄目だったのが外交政策だ。鳩山由紀夫首相の時代に日米関係をむちゃくちゃにした。中国や韓国との関係では、野田佳彦首相の時に尖閣諸島を国有化したり、韓国の李明博前大統領の竹島上陸を招いた。外交関係を冷え込ませた罪は重い。
経済政策も実効性が全く上がらなかった。自公政権になって、日経平均株価は民主党政権時の約8000円から倍以上に上昇、為替は1ドル=120円前後まで是正された。現政権の経済運営は、大枠でうまくいっていると思う。
民主党政権を振り返ると、政党のガバナンスが全然、効かなかった。環太平洋連携協定(TPP)や消費税増税など大きな課題に直面するたびに党内対立が激しくなり、最後は党の分裂につながった。
自公政権では最後はまとまり、幹部が決めたことをそれぞれの党も了承している。政党のガバナンスが効いているかどうかが、民主党政権とは全く違う。
―自公両党で結論を得た平和安全法制や軽減税率をどう見るか。
田﨑 平和安全法制の与党協議では「連立が崩れる」という不安を全く抱かなかった。ただ、軽減税率の協議では念入りに取材をしないと危ないなと思った。その違いは、平和安保法制の問題は日本の安全をどうやって守り、それにどう法律の枠をはめていくのかという論理構成の話だが、軽減税率は家計に直接関わるテーマだから性格が異なる。
12年の社会保障と税の一体改革の論議では、民主党と自民党の協議がほぼ決着しかかった段階で、公明党がどう対応するのかが問われた。公明党が加わり、民自公3党の合意になったことが結果的に正解だった。
当時、公明党が3党合意を受け入れた理由は、軽減税率の導入だった。その後、14年暮れの総選挙などを経て、軽減税率が負担軽減策の"一丁目一番地"として昨年秋の与党協議のテーマとなり、ようやく年末に結論を出した。議論の途中で財務省による「日本型軽減税率案」なるものも出てきてきた。公明党も同案に一定の理解を示していたと私は見ている。しかし、結局、同案に反対した。そこにブレがあったと思う。こうした議論のプロセスを検証し、反省すべきところは反省してほしい。
過ちを犯さない政党、組織はないのだから、間違った時はそれを認め、支持者に説明していく。その方が長期的には党と支持者の信頼関係が強まると思う。
公明党の役割
改革が急進的にならぬよう適切な意見を述べ、バランスの取れた政策を導き出している
―連立政権で発揮されている公明党の役割は。
田﨑 公明党は、政府・与党の改革が急進的にならないよう、自らの意見を反映させながらバランスの取れた政策を導き出している。
公明党の議員、特に若手は自民党よりも政治家としての資質が高い。よく勉強している。あとは人間力が培われるかどうかだ。政治は政策だけで動かないから。
―日本の政治における公明党の存在をどう見るか。
田﨑 私は1985年から約2年間、公明党の担当記者を務めた経験がある。当時の公明党は「反権力」「反政権」の色合いが濃い印象を持った。それが、湾岸戦争が発生した91年頃から現実路線に徐々にシフトし、「権力をどう動かしていくか」というアプローチに変わった。この路線の延長線上に今の自公政権がある。これは結果的に良かった。
公明党は結党以来、公害問題や社会問題の矛盾を熱心に掘り下げて解決をめざす政党だった。今は自分たちが考える政策をどう実現させるかというスタンスに変化した。
政治は、その政党の政策をどう実現させるかが最も大事だ。単に政策を掲げるだけで実行しなければ、政党への支持は広がらず衰退していく。旧社会党の盛衰を見れば分かる。旧社会党は政権に参加した時期もあったが、最終的に先細りしていった。それは、「反権力」に比重を置き過ぎたせいだ。公明党が、旧社会党のように政府の政策に「反対」するだけの路線を歩んでいたら、今日の姿はなかっただろう。
民主党が今駄目なのは、政権がやることに「何でも反対」しているからだ。いつの間にか、旧社会党と同じ道を歩み、反対するのが仕事みたいになっている。
今後の展望
参院選は自公が改選議席の過半数を獲得するかが焦点。野党再編はプラスの可能性低い
―4日に開幕した通常国会のポイントは。
田﨑 まず、今年度末までに15年度補正予算案と16年度当初予算案を成立させるべきだ。会期末は6月1日なので、今国会の実質的な審議は5月26、27両日の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)前に終わる見通しだ。4、5月は、TPP協定の承認と関連法案の審議が焦点になるだろう。
今年の最大の政治課題は夏の参院選だ。参院選で自公両党が合わせて改選議席の過半数を取れるかどうかが目安になる。私は衆参同日選の可能性はほとんどないと見ている。
―参院選目当ての野党再編の動きがあるが。
田﨑 民主党と維新の党が合流するようだが、マイナスとマイナスを足してプラスになるのか。合流によって化学反応が起きて、プラスになる可能性は低い。そこに共産党と小沢一郎氏の率いる政党が組んでも、たかがしれている。
もし本当に野党が怖い存在になるとしたら、それは、おおさか維新の会の橋下徹法律政策顧問が野党側に付いた時だ。橋下氏ほど発信力のある政治家は見当たらない。