e全国がん登録開始 治療前進へ患者情報を一元化
- 2016.01.06
- 情勢/解説
公明新聞:2016年1月6日(水)付
日本人の死亡原因第1位で、2人に1人がかかる「がん」。国民病ともいわれる病気の克服に向け、がんの患者数や生存率など、全ての患者情報を国のデータベースで一元的に管理する「全国がん登録」が今月から始まった。
がん対策を前進させる画期的な制度であり、多くの患者団体や医療関係者にとってその実現は悲願であった。
がん登録推進法の制定(2013年)をリードしてきた公明党にとっても、感慨深いものがある。
これまで、がん登録は都道府県が自主的に取り組む「地域がん登録」として行われてきたが、自治体によって登録内容は異なっていた。このため、国内全体で把握できるのは死亡者数だけで患者数は推計にとどまるなど、実態を完全につかむ手段としては不十分だった。
今後は、精度の高いデータが効果的に集められるようになる。大量かつ正確な情報の分析が進めば効果的な治療法の確立に道を開くほか、予防策の充実も期待できる。がん医療の質が向上するので、死亡率減少につながるだろう。
実際、1992年にがん登録法を制定し、各州の事業費を政府が助成している米国では目に見えた効果が出ている。がん登録士と呼ばれる専門家を医療機関などに配置し、患者データの収集や管理を行う。データを治療や予防策に活用した結果、発症率や死亡率が減少傾向に転じている。日本にとって大いに参考になる。
がん登録推進法は、患者から集めた貴重なデータを国民に還元するよう求めている。患者の病院選びや健康維持に有効な対策など、国民にとって役立つ情報発信が行われる必要がある。
登録に患者の同意は必要ないが、実名でオンライン登録されるので、情報漏えいといったセキュリティー面で不安を抱く患者は少なくない。データ管理には厳格に当たらなければならない。登録は専門知識を持った担当者が行うが、十分な人数が確保されているとはいえず、人材の育成も進めるべきである。
内閣府の調査では、がん登録を知っている人は約17%にとどまる。積極的な周知も欠かせない。