e長野バス転落事故 安全こそ最優先のサービスだ
- 2016.01.18
- 情勢/社会
公明新聞:2016年1月16日(土)付
ひしゃげた車体が事故のすさまじさを物語っている。
長野県軽井沢町の国道18号の碓氷バイパス入山峠付近で15日午前2時ごろ、スキー客らを乗せた大型観光バスが対向車線にはみ出し、3メートル崖下に転落した。乗務員を含め、14人が死亡、27人が重軽傷を負った。長野県警が事故の詳しい状況を調べているが、徹底した原因の究明を求めたい。
観光バスを運行していた会社は、運転手の健康状態の把握や定期的な適性診断を怠るなどの違反があったとして、バス1台を20日間の運行停止とする行政処分を今月13日に受けていた。
国土交通省は、この事故を「特別重要調査対象事故」に指定し、事業用自動車事故調査委員会に調査を要請し、委員会は調査に入った。さらに、県警が、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の疑いで、バスの運行会社を家宅捜索した。
国交省が昨年3月に公表した自動車運送業に関する統計年報によると、死傷者の発生につながりかねないバスの「重大事故」の件数は、右肩上がりの増加を示している。
一昨年3月、富山県の北陸自動車道で夜行バスがトラックに衝突した事故では、2人が死亡、26人がけがを負った。運転手が運転中に居眠りをした可能性が指摘されている。今回、国交省がバス会社を対象に対策会議を開催し、運転手の健康管理を徹底するよう要請していた最中での事故であり、極めて残念だ。
転落事故を起こした運転手は65歳で交代要員は57歳だった。長距離バスの運転手は、集中力と体力が求められることで知られるが、若い運転手の確保は年々難しくなっているのが実情だ。
背景の一つに2000年に観光バス事業への参入要件が緩和されたことで市場競争が活発化した半面、多くの中小バス事業者が厳しい経営環境に直面していることがある。車両の維持・更新に必要な資金が不足し、車両の老朽化が原因と見られる火災事故が増えている事実も見逃せない。
バス業界は再発防止に向けてどのような対応が可能なのかを速やかに検討すべきだ。公共交通機関にとって、安全こそ最も優先されるべきサービスであることを、いま一度思い起こすべきである。