e脳脊髄液減少症 保険適用を機に理解を広げよう

  • 2016.01.27
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年1月27日(水)付



交通事故など激しい衝撃で脳と脊髄を循環する髄液が漏れ出し、頭痛や目まいなどを引き起こす「脳脊髄液減少症」。数十万人とも推定される患者の救済へ、対策が大きく前進する見通しとなった。

厚生労働相の諮問機関が、同症の治療に有効なブラッドパッチ療法(硬膜外自家血注入療法)の保険適用を承認した。来月に正式決定し、4月から適用される運びだ。

この治療法は、髄液が漏れている硬膜の外側に患者自身の血液を注入して漏れを止めるもので、厚生労働省研究班の調査では、治療を受けた9割の患者に効果が認められている。一定の診断基準を満たせば、入院費などが保険適用となる「先進医療」に指定されているが、全額自己負担すると数十万円に上るなど、多額の費用がかかる。

そこで公明党は患者団体と連携し、治療法の確立やブラッドパッチ療法の保険適用を国・地方議員が総力を挙げて長年政府に要望してきた。今回の決定を高く評価したい。

保険適用の実現は、多くの患者にとって悲願であり、今後の治療に大きな希望をもたらす。治療件数が増えれば、同症のメカニズム解明など、研究の促進に貢献することも期待できる。

一方で、治療に携わる医師のスキルアップは喫緊の課題だ。脳脊髄液減少症は、症状を外見から判断することが難しいため、「異常なし」や精神疾患と診断するなど、医療現場の理解は必ずしも十分ではない。ブラッドパッチ療法後のケアも含め、医療従事者への詳細な情報提供が欠かせない。

診断基準に満たない18歳未満の子どもの症例研究も早急に進める必要がある。自賠責保険や労災保険、障害年金の認定についても、患者の実態に沿った制度へ見直しを求める声は多く、取り組むべき課題は少なくない。

何より、この病気に対する社会的な理解をさらに広げていくことが重要である。

職場や学校で「仮病」と疑われ、無理解と心ない言葉に苦しむ人、重篤で寝たきりになって職を失った人―。患者や家族が抱える苦しみは計り知れない。患者が安心して治療に専念できる環境整備を進めてもらいたい。

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