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  • 2016.02.01
  • 情勢/社会
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公明新聞:2016年1月31日(日)付



山口代表、井上幹事長の代表質問から



公明党の山口那津男代表と井上義久幹事長は27、28の両日、衆参両院の本会議で安倍晋三首相の施政方針演説に対する代表質問を行いました。この中で、経済の好循環を地方や中小企業、家計に広げていく必要性を強調。一人一人が輝き、自己実現できる「1億総活躍社会」の実現、東日本大震災からの復興加速などを訴えました。公明党の主張のポイントと、論戦に対する識者の反響を紹介します。


経済の好循環


さらなる設備投資、賃上げへ下請取引の適正化を進めよ


山口代表は、自公連立政権がデフレ脱却・経済再生を推し進めた結果、着実に成果を重ねていることを指摘【図参照】。全体的な企業収益が拡大する一方、中小企業の収益が伸び悩む現状を踏まえ、経済の好循環の拡大には「中小企業の設備投資や賃上げの支援が喫緊の課題だ」と強調し、最優先で中小企業の経営改善に取り組むよう訴えました。

その上で、具体策として、下請け取引の改善の徹底を挙げ、政府が16業種を対象に作成している適正取引に向けた「ガイドライン」の検証・充実や16業種以外への支援を検討するよう要請。安倍首相は、実態調査の結果を踏まえ「ガイドラインの改定や対象業種拡大を検討する」と応じました。

環太平洋経済連携協定(TPP)について、井上幹事長は「日本経済全体に大きなメリットがある」と力説。影響が懸念される農林水産業については、「経営安定対策や体質強化対策などを着実に実行し、生産者の声にきめ細かく対応すべき」と主張しました。安倍首相は「公明党とも緊密に連携し、現場の声に耳を傾けながら政策を講じる」と述べました。

一方、地方創生では、山口代表が2016年度に創設される新型交付金について、地方版総合戦略の策定が遅れた後発組の自治体も交付対象から外すことなく、活用しやすい形で配分するよう主張。

安倍首相は「スタートが遅れても、やる気があればチャレンジできるようにする。柔軟に活用できるようにする」との方針を示しました。


軽減税率


痛税感を緩和、「給付」に勝る。財源確保し社会保障削らず


消費税の軽減税率について、山口代表は、事業者負担への配慮の必要性を強調。関連法案の年度内成立を期し、円滑実施へ政府一丸で取り組むよう求めました。安倍首相は「混乱なく導入することが重要だ。事業者が早期に準備を開始できるよう、年度内成立をめざす」と述べました。

井上幹事長は、収入が低い人ほど税負担が重くなる「逆進性」や、買い物のたびに負担を感じる「痛税感」の対策として、与党が軽減税率の導入を最適と判断した経緯に言及。軽減税率が「世界標準」と言えるほど多くの国々で用いられている点も指摘しました。

民主党などが導入を求める「給付つき税額控除」には、(1)個人の所得と資産を正確に把握する制度が必要(2)所得を把握する社会保障と税の共通番号(マイナンバー)制度が定着していない(3)給付などに必要な事務手続きを全消費者に負わせるのは事実上不可能(4)給付では痛税感の緩和を実感できない―との問題点を挙げ、軽減税率が「給付」に勝ることを力説しました。

また、「社会保障が削られる」との批判に対しては、「その心配はまったくない」と強調。安倍首相は「社会保障と税の一体改革における2.8兆円程度の社会保障の充実に必要な財源を確保していく」と述べ、すでに決定している社会保障の充実を削る考えはないことを表明しました。


総活躍の推進


子育て・介護と仕事の両立へ働き方改革を加速せよ


政府が「1億総活躍社会」の目標として掲げた「希望出生率1.8」や「介護離職ゼロ」の達成へ、井上幹事長は、子育てと親の介護が重なるダブルケアの問題などを取り上げ、「非正規労働者の待遇改善や、子育て・介護と仕事の両立を可能とする『働き方改革』が不可欠」と指摘しました。

その上で早急な対策として、長時間労働の是正や、短時間勤務・テレワークなど柔軟な働き方の推進を訴え、介護休業や看護休暇などの取得率向上のための制度改善のほか、育児や介護を理由とした人事評価などの不利益な扱いの防止も求めました。

山口代表は、妊娠から出産、子育てまで切れ目なく支援する「子育て世代包括支援センター」(日本版ネウボラ)の全国展開に向け、「好事例や仕組み、メリットなどを周知し、導入促進を」と主張。高齢者が働きやすい環境づくりへ、再就職支援や、多様な就労機会を提供する「シルバー人材センター」の機能強化も訴えました。安倍首相は、子育て世代包括支援センターについて「全国展開をめざし、好事例の周知に積極的に取り組む」と答弁しました。

一方、がん対策の強化に向けて井上幹事長は、がん検診受診率の向上へ「個人への受診勧奨強化、職域検診の推進などを図るべき」と要請したほか、これまで「がん拠点病院」を中心に推進してきた緩和ケアを、拠点病院以外へも拡大するよう主張しました。


復興、外交など


被災地の創生は官民連携で。日中、日韓会談の定期化を


3月11日で東日本大震災の発災から丸5年を迎え、4月から「復興・創生期間」という新たなステージに入ります。山口代表は被災者が希望の持てる未来を切り開けるよう「これまで以上に力を入れる」と訴え、井上幹事長も「人間の復興」へ「共に闘い続ける」と決意を語りました。

その上で井上幹事長は、避難生活の長期化や分散化によるストレスなどを挙げ、「被災者の状況に応じた、きめ細かな『心の復興事業』がますます重要な段階に入る」と指摘。水産加工業など、施設や設備が復旧しても売り上げが戻ってこない業種の再興に向けては、販路開拓やノウハウ提供を「官民連携で支援することが必要」と主張しました。

一方、党訪韓・訪中団が環境を整え、昨年11月に3年半ぶりに実現した日中韓サミットを踏まえて山口代表は、日中・日韓関係前進の流れを「確かなものとし、逆戻りしない関係を築くべき」と強調。

「日中韓サミットの定例化と併せ、日中、日韓の首脳会談も定期化できるよう働き掛けては」と提案したのに対し、安倍首相は、日中韓サミットの際に「今後も日中、日韓の首脳会談を行うこととするよう働き掛けたい」と表明しました。

山口代表は深刻化する中東の難民問題にも触れ、人道的観点から将来を担う難民の子どもたちを日本に留学生として受け入れることも提案しました。


識者の反響


中小企業の声的確に代弁
兵庫県立大学大学院教授 佐竹隆幸氏


山口代表、井上幹事長の代表質問は、大企業相手の下請け取引の改善や生産性の向上という、中小企業が直面している課題を的確に指摘したものです。

従来は輸出型の大企業が利益を上げると、下請けである中小企業の仕事も増え、それが地域経済の活性化につながる図式がありました。しかし、近年は、大企業が賃金の安い海外で部品を生産し、国内の下請け企業に依存する割合は減っています。また、バブル経済崩壊後の「失われた20年」といわれる経済低迷期には、中小企業の生産性の伸びだけでは補えないほど下請け企業に対する価格引き下げ要求が強く、中小企業は苦しい立場にありました。

2012年12月の自公政権発足以来、大企業や都市部の経済は目に見えて活性化していますが、成長の恩恵が中小企業や地域経済に十分には届いていないという声もあります。公明党の代表質問は、こうした事態の打開につながるものです。中小企業の味方として、公明党が引き続き連立政権の中で存在感を発揮することを期待しています。


女性目線の政策提言光る
東京家政大学名誉教授 樋口恵子さん


一般的に、首相の施政方針演説は、総花的、抽象的になりがちですが、今回、公明党が具体的な政策を挙げて実現を迫ったことで、安倍晋三首相の考えも具体的で分かりやすくなったと感じています。山口代表、井上幹事長の代表質問には、政権を担う政党でありながら、自民党と違う視点で政策提言を行う公明党の良さが光っていました。

例えば、「介護離職ゼロ」や、妊娠から出産、産後に至るまで切れ目なくワンストップ(1カ所)で総合的な相談支援を行う施設の普及は、私も一貫して求めてきました。代表質問で、公明党が実現を後押ししてくれたことに感謝しています。

高齢者が生きがいを感じるには、自分の行いが周囲から認められ、感謝される場をつくる必要があります。その観点から、代表質問に盛り込まれた、多様な就労機会を提供する「シルバー人材センター」の機能強化は大事な視点です。

また、女性の視点から見て、ニーズが高まる選択的夫婦別姓を取り上げたことを高く評価しています。これからも実現を強く訴えてほしいと願っています。

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