e軽減税率は国際標準
- 2016.02.09
- 情勢/社会
公明新聞:2016年2月9日(火)付
海外在住者に実感を聞く
消費税(付加価値税)の軽減税率は、世界各国で受け入れられている。
識者も「(軽減税率は)まさに、"国際標準の制度"だ。導入国では国民からも理解が得られ定着している」(郭洋春・立教大学教授(1月23日付 本紙)と評価している。
タレントの高田万由子さんは、現在、家族で英国に在住。英国では、日本の消費税に当たる付加価値税の標準税率は20%。これに対し、英国人の生活に欠かせない紅茶が非課税対象になっていることを念頭に、「紅茶に必要なミルクやビスケットも同じ。これでイギリス人は納得するんですよ」と語る(2014年4月=日本新聞協会ホームページより)。
今回は、軽減税率導入の国で暮らす日本人から実感の声を聞いてみた。
ドイツ
ドイツの大学で研究活動を続ける木村健一さん(32)は、妻と子ども1人の3人暮らしだ。
ドイツでは、付加価値税の標準税率19%に対し、野菜・乳製品・卵など一部の食料品などに7%の軽減税率を導入。項目や内容によっては、税率が細分化されており、例えば、牛乳は7%、豆乳は19%、新鮮な果物は7%、果汁入りジュースは19%などとなっている。一方、アルコール類や娯楽系の商品、電化製品、外食などは19%のままだ。
買い物時、軽減税率の実感は「店頭の表示が税込価格なので、特に意識したことはありません」。それでも、「ドイツでは税率アップの際、国民の購買意識の低下が懸念され、実際に景気が落ち込んだことがあったようです」と軽減税率の必要性を強調する。
韓国
買い物時に安くなるのが楽
韓国に約7年住む梁川泰子さん(39)。夫と2歳5カ月の娘の家族3人で、ソウル市内に暮らす。韓国では、付加価値税10%に対し、一部の食料品が非課税だ。
「日本と比べ、卵が1パック10個入り300円と少し高め。非課税なのは、韓国料理によく使うキムチやコチュジャンをはじめ、野菜、肉、魚などです」と語る。
食費は外食を含め、日本円で月5万円程度。約5、6割が非課税対象の食料品だと言う梁川さん。「もし、それらが全部課税されたら、とても困る。考えただけで、ぞっとします」と語る。また"消費税の後払い"については「今、子どもが2歳と、手の掛かる時期。少しでも手間を省きたいというのが本音です。買い物の時に安くなっていた方が楽ですね」と語る。
イギリス
「軽減」ないと生活できない
現在、イギリスの大学に留学中の向江慎一さん(29)は、学生寮住まいだ。
「日本との物価の違いは外食が割高なことです。比較的に安い学食も、最低でも5ポンド(900円)はします。学生にとっては経済的に非常に大きな負担で、自炊しないと生活が成り立ちません」と悲痛な声を寄せる。頻繁に近所のスーパーマーケットで買い物をする毎日だ。
イギリスの付加価値税は20%で、食料品は非課税。例えば、パン1斤が約0.9ポンド(162円)、牛乳約2.27リットルで1ポンド(180円)とリーズナブル。また、イギリスでは野菜なども同様に安い。「自分でサンドイッチを作れば、ランチ代は1ポンド(180円)以下に抑えることができます」とした上で、「軽減税率がないと生活できない」と語る。また、「給付つき税額控除」のような"消費税を後から払い戻す"制度について、「イギリスのスーパーで多く見かけるのは、一度に大量の食材や必需品を買っている消費者。その場で安くならないと非効率的」と否定的だ。
レシートに工夫凝らす
複数税率を判別するため、海外でも工夫が凝らされている。ここでは、ドイツのレシートを紹介したい。
ドイツでは、複数税率が分かりやすいよう、商品ごとに「A」「B」とアルファベットが記載されている【写真】。「A」が付加価値税の標準税率19%、「B」が軽減税率の7%を表す。このレシートでは、アルコール類は標準税率19%(A)、スナック菓子類が軽減税率7%(B)の対象商品を示している。
レシート下部には、それぞれの小計と税額を分けて記載。しかし、「どの商品も税込表示のため、買い物の際は特に意識することはない」(ドイツ在住の木村さん)と言う。ちなみに、レシート内にある「Netto」は正味価格・税抜き本体価格、「Steuer」は税金、「Brutto」は税込価格をそれぞれ表す。
また「B」が記載されている「LEERGUT EINWEG」は、使用済みの空き容器をお店に返すことで払い戻される「デポジット料金」のこと。ドイツでは、ペットボトルやガラス瓶など容器自体に費用が掛かっているためで、使用後、お店に持ち込むと、差し引かれる。