e凍土遮水壁 汚染水対策、早急な運用開始を

  • 2016.02.17
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年2月17日(水)付



東京電力福島第1原発の事故に伴う汚染水対策として計画されている「凍土遮水壁」の設置工事が完了した。廃炉に向けた工程のさらなる加速化を急がなければならない。

第1原発では、炉心を冷やすための注水が今も続き、燃料に触れた水は高濃度汚染水となって建屋地下にたまる。さらに地下水の流入により、汚染水の発生は1日で約400トンに上るともいわれる。

凍土遮水壁は、その建屋周辺の土壌を凍らせて、建屋に地下水の流入を抑制することが目的だ。建屋の手前で地下水をくみ上げて海に流す「地下水バイパス」などとともに、対策の切り札として位置付けられている。

計画では、1日当たり約100トンまでに汚染水の発生を減らせると東電は試算している。ところが、凍結開始から完了まで約8カ月かかる見通しだという。政府と東電が廃炉工程表で掲げていた2015年度中の凍結完了は到底不可能な状況だ。

原発事故の対策が滞る現状に、被災者の落胆はいかばかりか。凍土遮水壁の計画はなぜここまで遅れたのか。その最大の原因は、東電が安全な運用を担保するための十分なデータや資料を示さず、原子力規制委員会の議論が長期化したためだ。

規制委は、東電が当初示した運用手順では、建屋地下にたまる汚染水が漏れ出す恐れを指摘。安全な運用方法の明示を求め、凍結開始を認めなかった。このため、東電は規制委の指摘を受け入れる方針に転換、実施計画の認可に向けた申請手続きに入り、ようやく運用に向けて動き出す。

両者の意思疎通も不十分だったと言わざるを得ない。東電は規制委の指摘を重く受け止め、一日も早い運用開始へ迅速に対応すべきである。

原発事故から、まもなく5年。汚染水処理の進捗は、事故収束と廃炉、さらには住民帰還や福島再生の行方を大きく左右する。今なお風評被害に苦しむ被災者も多く、対策の遅れは許されない。

凍土遮水壁には、約350億円の国費が充てられており、政府の責任も重い。強いリーダーシップで知見や技術を総動員すると同時に、対策の必要性や進捗状況を住民に丁寧に説明してほしい。

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