eコラム「北斗七星」

  • 2016.02.26
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年2月26日(金)付



東京都多磨霊園には首相経験者をはじめ、多くの為政者が眠っている。蔵相を7度も務めた高橋是清・元首相の墓碑も建つ。起伏に富んだ人生は、80年前のきょう26日、青年将校の凶弾によって幕を閉じた。首都を震撼させた「2.26事件」である◆大物政治家の暗殺が続く時代にあって、軍事費増額を要求する軍部に対し、「打ちつづく天災によって国民ははなはだしく痛められている。(中略)これ以上は到底出せぬ」(「高橋是清」 大島清 中公新書)と断言、生命の危機を感じながら一歩も引かなかった。しかし、その勇気ある決断と発言が、陸軍の猛反発を買い、非業の死を遂げてしまう◆今国会は、与野党の国会議員の失言や放言が目立つ。国政を担うにふさわしい資質を十分に備えているのか、疑いたくなる舌禍もある。国民の負託を受け、言論の府に身を置く職責の重さを今一度かみしめ、自らの言動を律してもらいたい◆国民は、来年度予算案の中身や政策論議で、実のある言葉の応酬を望んでいるはずだ。このままでは、議会制民主主義そのものに対する信頼を揺るがしかねず、猛省を促したい◆是清翁は、「政治は人物の問題である」(「随想録」 中央公論新社)と喝破した。政治家の劣化を見逃さないように、泉下でにらみを利かしているに違いない。(明)

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