e東北の復元力が未来への希望

  • 2016.03.07
  • 情勢/社会
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公明新聞:2016年3月6日(日)付



てい談 東日本大震災から5年
宮城県知事 村井嘉浩氏
宮城学院女子大学学長 平川 新氏
公明党幹事長 井上義久氏



東日本大震災の発災から間もなく5年―。インフラ(社会資本)や住宅などの整備が進む一方で、被災者の心のケアなど依然として多くの課題が横たわっています。そこで、宮城県の村井嘉浩知事と宮城学院女子大学の平川新学長、公明党の井上義久幹事長に「心の復興」「人間の復興」への方途について語り合ってもらいました。

井上義久幹事長 この5年間、無我夢中で復興の加速に取り組んできました。さまざまな面で復興は進みましたが、今なお17万人以上の方々が避難生活を余儀なくされている現状には、じくじたる思いです。生活の再建へ引き続き全力で支援していきたい。


村井 心のケア、風化・風評対策に全力。公明党が復興を加速


村井嘉浩知事 鉄道や道路の復旧は一気に進み、港湾のコンテナ貨物量は震災前のピークを超える結果が出始めています。今後は、被災者への心のケアをはじめ、商品の販路の回復・開拓などが課題となります。公明党には与党の一員として、ぜひとも力を発揮してもらいたい。実際、公明党が政権に復帰し、復興がスピーディーになりました。仙台空港の民営化は、公明党のリーダーシップで実現したものです。

井上 党宮城県本部はこのほど、5回目となる仮設住宅の入居者を対象にしたアンケートを行いました。今回は初めて災害公営住宅でも実施しました。新たな地域コミュニティーをめぐる課題の解決など「心の復興」「人間の復興」への取り組みは、まだまだ続くと痛感しています。

平川新学長 大震災は地域間の格差を助長しました。加えて、政治や行政の対応自体がその格差を広げていないか心配しています。その検証が必要です。


合意形成の事例を検証し教訓に


井上 復興格差は深刻な問題です。その原因を突き詰めると、合意形成が早くできた地域は、復興も速いということが分かりました。

平川 住民と行政がどのような過程で合意形成に至ったのか。その事例の検証も、今後の教訓として生かしていきたいですね。

村井 教訓という意味で、今回の津波被害は多くのことを示唆しています。

平川 東北地方は歴史的に大津波を何度も経験しているので、沿岸部には10メートル規模の堤防が整備されてきました。これが、皮肉にも油断につながってしまったことが残念でなりません。実際の津波は10メートルを簡単に超え、甚大な被害をもたらしました。

井上 ハード面の対策も大事ですが、その限界を見極めた上で、避難所の運営などソフト面での対策も重視すべきです。

平川 歴史研究に携わる身として、災害への防御性が高くない時代に、いかに災害と向き合ってきたのか考察を深めていきたい。例えば、堤防のない沿岸地帯では、「少しでも高い所に」との考えの下で家や集落が造られてきました。今回の大震災でも、標高が1メートル高いだけで被害度は全く違います。

堤防を造る科学技術の力と、過去の防災・減災の知恵を、うまく組み合わせ、防御性を高めていく試みが求められます。防災・減災の知恵を再発見し、現代に生かしていくことが使命だと感じています。

村井 南海トラフを震源とする巨大地震の発生も想定されています。大震災の教訓を十分に研究・検討し、その成果を普及していくことが不可欠です。

井上 同時に、「風化」と「風評」という「二つの風」への闘いも、継続していかなければいけません。

村井 被災地では、今なお外国人の観光客数は震災前より回復していません。震災の記憶も、被災地から離れれば離れるほど薄れつつあります。被災3県以外の土地を訪れると、震災関連のニュースをテレビのローカル番組で目にすることが減りました。

平川 風化防止に関しては、知事のリーダーシップの下、震災遺構である宮城県南三陸町の防災対策庁舎の県有化が決まり、当面保存されることになりました。

村井 平川学長には県の有識者会議の座長として、尽力していただきました。風化防止への取り組みにも努めていきます。


復興・創生期間が4月からスタート


井上 4月から「復興・創生期間」という新たなステージに移ります。

村井 被災者をどうケアするかという視点がますます重要になります。住まいの確保に加え、孤立化への対応が急がれます。子どもの不登校の問題も深刻です。県では大震災を境に、中学生の不登校率が急上昇しました。

平川 地域の絆の再構築も求められるのではないでしょうか。盆踊り大会や運動会などの活動が活発になることで、住民の絆が深まり、地域再建の原動力になることも期待されます。

井上 復興・創生期間の焦点は、自治体の自立を促進することと、新たな東北の創生につながる「創造的復興」のモデル地域をつくること。もちろん、福島の原発事故をめぐる対応は国が前面に立ち、責任を持たなければなりません。その上で、基本的には自治体が復興の中心になり、国がサポートしていきます。

平川 自治体の役割が一層大きくなります。

村井 創造的復興については、仙台空港の民営化以外にも、水産業復興特区がすでにスタートしています。さらに、医療環境を充実させる観点から、4月には東北に新しい医学部が誕生します。


平川 過去の防災・減災の知恵を再発見し現代に生かすべき


平川 私は、東北の持つ復元力が復興のカギを握ると信じています。東北地方は歴史的に、巨大津波だけでなく冷害による凶作にも襲われてきました。大飢饉で何万、何十万人という犠牲者も生んでいます。ですが、長い目で見れば、危機的な状況から立ち直ってきたという歴史でもあります。しかも、災害を乗り越えるたびに地域の産業を災害前よりもさらに発展させてきました。農作物に付加価値を付けて商品化するなど、こうした過程で生まれた名産品は少なくありません。大震災で多大なダメージを受けたからこそ、未来があります。その希望を持ちたい。

村井 同感です。東北には底力があります。必ず復興します。そのためにも、公明党にはこれからも頑張ってほしい。

平川 被災者のニーズは一人一人違いますが、それらを集約し、政策として実現できるのが公明党の強みだと感じています。


井上 自治体の自立を促進。どこまでも被災者に寄り添う


井上 それは政治の原点でもあります。被災者にどこまでも寄り添い、その声を政治に反映させる。公明党はその姿勢に徹します。

平川 被災者にとって寄り添われること自体が強くて温かな励みになり、心の回復につながります。

村井 公明党は、国と地方の議員が一緒になり、一軒一軒回って被災者の声を吸い上げ、施策として実現してくれました。こうした動きができるのは公明党だけです。最も困った時、苦しい時に活躍する政党だと信頼しています。

井上 被災地の議員が自ら被災しながらも、「大衆とともに」という立党精神で、その地に踏みとどまり奮闘してくれました。この姿こそが、公明党の立党精神を象徴しています。「心の復興」「人間の復興」を成し遂げるまで、これからも全力で闘います!



むらい・よしひろ
1960年、大阪府生まれ。防衛大学校(理工学専攻)卒。陸上自衛隊東北方面航空隊、宮城県議(3期)などを経て、2005年に宮城県知事に初当選。現在3期目を務める。著書に『復興に命をかける』『それでも東北は負けない』。


ひらかわ・あらた
1950年生まれ。東北大学大学院文学研究科修士課程修了。同東北アジア研究センター教授・センター長、同災害科学国際研究所の初代所長などを経て、2014年4月から現職。専門は、日本近世史研究(江戸時代史)・歴史資料保存学。著書に『開国への道』など。

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