e大災害時の帰宅対策

  • 2016.03.08
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年3月8日(火)付



一時滞在施設 どう確保するか



厳しい冬の寒さの中、首都圏だけで500万人を超える人が職場や駅などで不安な一夜を過ごした。東日本大震災が起きたあの日から、間もなく5年。各地で防災対策の再点検がされる中、都市部では、帰宅困難者対策の加速を求める声が高まっている。

政府の試算では、首都直下地震が起きた場合、首都圏の帰宅困難者は最大800万人に上る。このうち、勤務先などに滞在できる人を除く、買い物客や旅行客などの屋外滞留者は東京都内だけで約92万人にも達するという。

一方で、東京都が屋外滞留者のために確保できている一時滞在施設は、現段階で約24万人分にとどまる。

大規模災害時に、数十万人に長時間の屋外滞在を強いる事態になれば、体調の悪化や交通の混乱などで二次被害を広げないか不安である。一時滞在施設の確保を急がなければならない。

対象として想定されるのは公共施設や大学、民間ビルなどだ。民間事業者の間には、帰宅困難者の受け入れは「必要な地域貢献」という認識はあるが、現行制度では、施設内で事故が起きると、施設所有者が責任を問われることになりかねない。このため、施設の開放に踏み切れない事業者は多い。一時滞在施設が不足する現状のまま災害が起きれば、帰宅困難者が一部の施設に殺到し、さらなる混乱を招きかねないと懸念する事業者もいる。

事態の打開に向けた一つの考え方として事業者から要望が多いのが、善意の行動であれば、過失があっても責任を免除する免責制度だ。

都市部で、免責の導入に動き出した自治体がある。名古屋駅周辺は南海トラフ地震で3万人以上が行き場を失う可能性があるため、名古屋市は昨年、一時滞在施設の運営指針を作成。施設内で事故が起きても「故意または重過失がない限り責任を負わない」との方針を明示した。その結果、2014年は4000人分だった同駅周辺の一時滞在施設は、現在1万6000人分に増加し、今年も協力事業者が増え続けている。

帰宅困難者対策は人口が多い都市部に共通する課題だ。行政は、柔軟な対応で事業者の理解を促してほしい。

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