eコラム「北斗七星」
- 2016.03.25
- 情勢/社会
公明新聞:2016年3月25日(金)付
有吉佐和子が認知症をテーマにした小説『恍惚の人』を出版したのは、1972(昭和47)年だった。介護や徘徊などの高齢化問題が身近に迫ってきたことを世間に予見させ、200万部近いベストセラーとなった◆あれから40年以上の歳月が流れた。2012(平成24)年の時点で、65歳以上の約7人に1人が認知症となり、正常と認知症との中間状態の軽度の認知症を合わせると、65歳以上の実に4人に1人が認知症、またはその予備軍と推計された◆さらに2025(平成37)年には、認知症の人は65歳以上の高齢者の5人に1人の割合にまで上昇すると見込まれている。65歳といえば定年退職期を迎える年代だし、年金受給開始の年齢である。そうした時に「認知症」では余りにも悲しい◆しかし、恐れることなかれ。脳のリハビリ研究の第一人者である東北大学の川島隆太教授は、認知症予防に「文章の音読」が科学的に効果があることを立証した(日曜版20日付参照)。文章の意味を理解する必要はなく、800字程度の文章を声を出して早く読む「音読」を、毎日短時間行うだけで脳の機能は活性化されるという◆800字といえば、小紙では月曜日に掲載している『書評』欄が目安だ。認知症予防と教養を深めるためにも『書評』欄の活用をお勧めしたい。(流)