e待機児童の解消を求める緊急提言(全文)

  • 2016.03.28
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年3月26日(土)付



公明党対策推進プロジェクトチーム



政府は「待機児童解消加速化プラン」に基づき、保育所等の受け入れ児童数の拡大や保育士の処遇改善等に取り組んできたところだが、依然として2万人を超える待機児童が存在する。

他方、待機児童は大都市を有する都道府県に多く存在することから、問題解決のためには、地域の実情や利用者の視点に立ったきめ細かな支援策が重要と考える。

こうした観点から、保育人材を確保するための処遇改善など総合的な取り組みを推進するとともに、待機児童の多い地域を「待機児童解消特別地域」に指定し、即効性ある受け皿の確保などを集中的かつ重点的に講ずることも必要である。

なお、保育士のみならず、介護福祉士をはじめ今後の福祉人材の確保は、1億総活躍社会の実現に向けた極めて重要な課題であり、政府として国家戦略の下、総合的な取り組みを進めることを要望する。

政府におかれては、本提言に基づき、必要な予算の確保を含め、早急に待機児童の解消に取り組まれることを強く求める。

<保育の受け皿拡大等>

1.0―2歳児の受け皿確保と「新3歳の壁」解消

(1)小規模保育などの整備促進

待機児童の8割以上を占める0―2歳児の受け皿を確保するため、家庭的保育・小規模保育など多様な保育サービスを拡充する。

(2)小規模保育の年齢・定員要件の弾力的運用

小規模保育の対象を3歳児まで拡大できる措置を推進するとともに、現行19人定員の弾力化など、受け皿を拡大するための時限的措置を講ずる。

(3)年度途中の保育所開園の推進

待機児童の多い自治体にあっては、年度途中であっても保育所を開園できるよう、柔軟な運営を求める。

(4)地域インフラを活用した受け皿整備

地域インフラ(地域の高齢者宅、空き家、空き教室など)を活用した一時預かりの推進など、弾力的な受け皿拡大を進める。

(5)連携施設の確保

3歳児以降の受け皿として連携施設の確保を推進する。

2.認可外保育所の認可化移行支援

5年を目途に認可施設へ移行する認可外施設への運営費補助について、適用要件を緩和する。また、国の運営費補助の実施により、認証保育所等の利用者負担を軽減する。

3.利用者支援事業(コンシェルジュ)の機能強化

多様な保育ニーズと保育施設とのマッチング(専任職員の配置)を行う利用者支援事業について、申請前段階からの相談支援や保留者を対象とした夜間・休日時間外相談を実施するなど、利用者の視点に立った機能強化を推進する。

4.「保育所入所不承諾通知書」の改定

「保育所入所不承諾通知書」の様式を改定するとともに、利用者支援事業などを通じたきめ細かな受け皿確保に努める。

5.送迎サービス等への補助

交通の利便性が低い保育所・認定こども園等については、駅からの送迎サービスや駅での滞留スペース確保に対する経費等を補助する。   

6.施設整備費補助の拡充

(1)設置主体による補助対象の格差解消等

待機児童の多い地域について、社会福祉法人に限ることなく、株式会社、NPO法人、宗教法人等多様な保育主体の参入を促すため、地域を限定の上、施設整備費などの補助制度を早急に検討する。また、所得拡大促進税制の活用などにより、株式会社で働く保育士の処遇改善に取り組む。

(2)施設整備費、改修費補助制度等の拡充 

資材費の高騰等を考慮し、賃料を含め借地料支援の強化を図るとともに、賃貸物件について大規模修繕の場合の補助を検討する。

7.公有地(国有地、都有地等)等の優先的な活用

(1)定期借地制度の活用

都市部における施設整備の用地確保を図るため、定期借地権による貸付スキームを活用し、保育所等の整備を推進する。また、公務員住宅や独立行政法人・国立大学法人の空きスペースの活用を含め、低廉価格で保育所が設置できるよう取り組む。

(2)都市施設等の活用

保育施設整備に向けた都市施設等(公園など)へのさらなる設置を促進する。

8.幼稚園の預かり保育への支援強化

幼稚園における長時間の預かり保育事業に係る支援強化を検討する。

9.保育施設の設置に対する地域の合意形成のための支援

「地域で子どもを育てる」意識の醸成・徹底により、保育施設建設に対する地元住民のスムーズな合意形成の確立を図る必要があることから、合意形成支援の強化を図るとともに、防音対策のための補助制度(既存園を含む)の活用を推進する。

10.民間物件確保のための税制優遇措置の活用推進

社会福祉法人等に適用される固定資産税の非課税措置(地方税法348条)を活用し、保育所に貸し出しできる民間物件の総数を増やす。

<保育人材の確保>

1.保育士のさらなる処遇改善

(1)賃金の引上げ

他職種と比較して差がある賃金水準のかい離の解消を目指し、保育士の賃金水準をまずは約4%(※)、確実に引き上げる。さらに、賃金実態等を踏まえつつ、更なる引き上げについて財源確保策とあわせて検討する。※約4%...平成27年(2015年)度補正予算を含む。

(2)キャリアアップ等の支援

職責に応じた研修などのキャリアアップ支援やキャリアパスについての議論(3党合意、子ども・子育て支援法検討項目、附帯決議)を推進する。あわせて、キャリアアップの仕組みの構築を図りつつ、勤続年数に応じた加算の仕組みの強化や若い保育士等にも加算が行き渡るような仕組みなど、財源確保策とあわせて更なる検討を行う。

2.保育士が働きやすい環境整備

(1)短時間正社員制度の推進

短時間正社員制度の推進など潜在保育士を含めた保育士の確保を図る。

(2)育児休業取得の推進

保育士の離職原因のトップが「妊娠・出産」(25.7%)であることから、育児休業取得の推進など、保育士の就業継続を支援する。

3.保育士の子どもの優先入所

未就学児をもつ保育士の優先入所を推進するとともに、国または都道府県レベルの広域的な範囲で同時に実施できるよう取り組む。

<その他>

1.育児休業制度の取得促進

育児休業から保育園への入所が円滑に進むよう、政府が事業主等に対して要請を行うなど、育児休業が取得しやすい職場環境づくりを推進する。

2.事業所内保育所の設置促進

事業所内保育所の設置に係る補助制度等の活用や、政府の事業主等に対する設置要請などを通じて、立地場所や中小企業による共同設置など多様で柔軟な事業所内保育所のさらなる設置を推進する。

3.多様な働き方の推進

フレックスタイムや短時間勤務、テレワークなど、多様な働き方を推進する。

4.幼稚園の教諭免許及び保育士の資格の在り方の検討

平成24年(12年)の3党合意、子ども・子育て支援法の検討項目、衆参委員会での附帯決議等を踏まえ、幼稚園の教諭免許及び保育士の資格の一本化を含め、その在り方について検討する。

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