e震災5年 暮らしの再建へ新たな課題
- 2016.03.31
- 情勢/社会
公明新聞:2016年3月31日(木)付
第5回アンケート結果から
党宮城県本部
東日本大震災から5年の節目に、公明党宮城県本部(庄子賢一代表=県議)は、5回目となる仮設住宅でのアンケートに加え、今回は災害公営住宅でも初の聞き取り調査を行った。また、この結果を基に作成した「東日本大震災からの復旧・復興に関する要望書」を今月23日、村井嘉浩宮城県知事に提出。同アンケートは、今年1月31日から約1カ月間、県内9市3町の870世帯を対象に面談方式で実施した。被災者の生の声から、新たな課題が浮き彫りとなった。=東日本大震災取材班
仮設住宅
望まれる医療費減免
集約には コミュニティー持続を
5市2町の仮設住宅で行った調査の結果によると、住民の多くは高齢者で、単身、2人世帯は63.64%。健康状態については、「良い」「普通」が78.14%で、残りの21.86%は「すぐれない」「悪い」と回答。「移転のめどが立っている」という人は78.66%に上り、前回の調査(2014年6月)より19.34ポイント上昇した。
一方で、「移転のめどが立っていない」という人は21.34%。このうち、42.34%は、「災害公営住宅の抽選に当たらない」と答えた。
「仮設住宅の集約に際して望むことは」との質問では、54.52%の人が「コミュニティーの持続」を希望。また、「自治体などへの要望」(二つを選択)については、「医療費減免措置の継続」が33.14%で最も多く、「災害公営住宅の家賃負担の軽減」(30.52%)、「介護支援の強化」(11.39%)と続いた。約6割の住民が、生活・経済面への支援を求めていることが明らかになった。
石巻市内の仮設住宅に住む自治会長(59)は、高齢世帯から声が多く寄せられる「医療費の負担減や福祉の充実」が不可欠であると強調する。また、仮設団地の住民の転出が相次ぎコミュニティーが崩れていることを説明。移転先でも「人と人がつながる対策を」と訴えた。
4人家族で同市内の仮設住宅に暮らす女性(53)は、「災害公営住宅の家賃が高く、"次の住まい"をどうするか迷っている」と将来への不安を語った。
災害公営住宅
「公共交通」の改善早く
住民交流へ自治会に援助
災害公営住宅の調査は4市1町で実施。結果によると、入居者の家族構成は「単身」が29.41%、「2人」が42.53%と約7割が単身や夫婦のみで、そのほとんどが高齢世帯だった。
「災害公営住宅での行事や地域の行事に参加したいか」という問いでは、72.30%が「参加したい」と回答。同住宅内に「話し相手はいるか」という問いでは、約2割の18.52%が「いない」と答えた。
現在の生活について聞くと「大いに満足」が12.62%、「ある程度満足」が66.36%で、「満足」と答えた人が約8割に上った。
一方で、「今後必要だと思う支援」(二つを選択)については、「交通の便の改善」が20.65%で最も高く、次いで「家賃の補助」(19.17%)、「自治会の運営サポート」(10.32%)と続いた。高齢世帯の入居が多い中、路線バスの充実など、公共交通の整備が喫緊の課題として浮かび上がった。
多賀城市の災害公営住宅に単身で暮らす女性(82)は、月3回、老人クラブに参加するため約3キロ離れた公民館に通っている。住宅前にバス停はあるものの、バスは2~3時間に1本のため「もっと便数が多ければ」と嘆く。
同住宅では入居が始まった昨年10月から、わずか5カ月で自治会が結成。自治会長(71)は、町内会との交流などコミュニティーづくりを促進するためにも「行政からのサポートが欠かせない」と話している。
声聞くことが「心の復興」
震災復興支援グループ「きぼう」(仙台市)
浅見 健一代表
復興への課題を「住民の視点」から正確に把握するという点で、5回も続けている宮城県本部のアンケートの意義は、極めて大きいと思います。
結果を見ると、住民の心のケアの必要性を実感しました。特に地域のコミュニティーづくりに関しては、NPO法人やボランティア団体の力を活用して、行政が深く関わるべきです。
被災者の声を聞くことは、心の復興につながると私は信じています。
公明党には、議員のネットワークを生かして、現場の声を政治の表舞台に出し続けてもらいたいと期待しています。
きめ細かい生活支援に全力
党宮城県本部
庄子 賢一代表
今回は仮設住宅のほか、災害公営住宅の住民へ聞き取り調査を行った結果、被災者に対する新たな支援へのニーズが顕在化した。暮らしの安心を確保する上で必要なことは、現場を歩き、生の声に耳を傾けることであるとあらためて痛感した。
今後は、経済面の支援を中心に、地域コミュニティーの創出に取り組む。医療費減免措置については、自治体別ではなく県全体での継続が求められている。
「復興・創生期間」という新たなステージに入った今、国や民間団体、NPO法人などとも連携を強め、きめ細かい生活支援をしていきたい。