e奨学金制度 政府は「給付型」の詳細詰めよ
- 2016.04.01
- 情勢/社会
公明新聞:2016年4月1日(金)付
学生の卒業後の所得に応じて月々の返還額が変わる「所得連動返還型奨学金」が、来年4月以降に新たに奨学金を借りる人から導入される。学生は入学後、大学窓口などで無利子奨学金を借りる手続きをする際、従来の「定額返還型」か新たな「所得連動返還型」かを選べるようになる。
従来の定額返還型は、年収が300万円以下の場合ならば返還が最長で10年猶予される制度があるものの、原則は月に一律1万4400円(貸与総額260万円の一般的なケース)を支払わなければいけない。所得連動返還型では返還猶予制度を維持しつつ、月の返還額が最低で2000円まで引き下げられる。
日本学生支援機構から奨学金を借りている人は130万~140万人台で推移しており、全学生のほぼ半数が利用している計算になる。しかし、卒業しても希望する働き先が見つからなかったり、低賃金の非正規労働のため返還に困る人は少なくない。奨学金の返還を3カ月以上延滞している人は17万3000人(14年度)に上る。返還状況は厳しいが、返還を理由に進学を諦める人が増えることがあってはなるまい。
今後は、公明党が一貫して主張している、返還の必要がない給付型奨学金の創設が必要ではないか。経済協力開発機構(OECD)加盟34カ国の中で、国公立大学の授業料が高めに設定されているのに、国による給付型奨学金がないのは日本だけだ。
この点について、安倍晋三首相が3月29日、給付型奨学金の創設を検討する考えを明らかにしたことは評価に値する。苦しい財政状況ではあるが、政府は早急に制度の詳細を詰めてもらいたい。公明党も一層力を入れる構えだ。石田祝稔政務調査会長は「党として奨学金に特化した検討の場を設ける必要がある」との考えを示した。
また、首相は無利子奨学金の拡充にも言及した。16年度予算では無利子奨学金枠を1万4000人分増やしたが、これもさらに進めてもらいたい。すでに卒業した人への支援も欠かせない。まずは所得連動返還型の仕組みを既卒者などにも適用してはどうか。誰もが安心して学べる環境をつくるため、知恵を絞りたい。