eTPP審議入り 中小企業へのメリット説明を
- 2016.04.05
- 情勢/社会
公明新聞:2016年4月5日(火)付
日本はもとより、世界経済の動向に大きな影響を与える重要な議論が国会で始まる。
日米両国を含む12カ国による環太平洋連携協定(TPP)の承認案と関連法案が、きょう衆院で審議入りする。
今年2月の正式合意以来、発効に向け各国は、議会の承認など国内手続きを進めている。ただし、2年以内に終えられない場合は、国内総生産(GDP)で参加国の85%以上を占める6カ国以上の批准で発効する。
そのためには、全体のGDPの8割以上を占める日米両国の批准が不可欠だ。早期に承認・成立させ、発効への道筋を確かなものにする必要がある。
TPPが発効すれば、世界のGDPの約4割を占める巨大な自由貿易圏が誕生する。関税撤廃や投資ルールの明確化は貿易や投資を拡大させ、日本経済に大きな恩恵をもたらす。政府は、生産性の向上などでGDPを約14兆円押し上げると試算し、成長戦略の柱として期待している。
とはいえ、日本国内でTPPを不安視する声が強いのも確かである。関税撤廃で国内の農林水産物が打撃を受ける恐れがあるからだ。
関連法案には、牛・豚肉生産者の収入が生産費を下回った場合に赤字分を補填する支援策などが盛り込まれている。審議では、法案とともに政府の国内対策の内容を丁寧に説明し、生産者の安心に結び付けてもらいたい。
一方、TPPの恩恵は大企業に限られると懸念する事業者も少なくない。ただ、合意内容では幅広い関税撤廃のほか、通関手続きの迅速化や知的財産の保護など参加国共通のルールが定められており、これまで海外展開に踏み切れなかった中小企業を後押しする効果は大きい。
陶磁器やタオルといった地方の産品、機械部品など中小企業が手掛ける製品は高品質で評価は高い。TPPを契機に海外展開に向けて始動する企業も出てきている。
課題は、TPPが自社の事業にどう結びつくのか判断できるだけの十分な情報が伝わっていない点だ。政府には、事業上のメリットを分かりやすく示すと同時に、事業者にきめ細かい支援を行う姿勢が求められる。