eコラム「北斗七星」
- 2016.04.06
- 情勢/社会
公明新聞:2016年4月6日(水)付
真新しい服とかばんを身に付け、親に手を引かれて校門をくぐるピカピカの新入生―。きょうから明日にかけて、全国の多くの公立小中学校が入学式を迎える◆4月の入学は、日本独自の教育習慣。欧米では9月に新学年が始まる国が多い。日本でも近年の国際化の流れに沿って、大学では9月や10月に入学可能なケースも増えつつあるようだ◆そもそも、なぜ日本だけが4月入学になったのか。教育史研究の権威であった佐藤秀夫によると、実は近代の学校制度が導入された明治の初期、日本でも新学年の開始は、欧米にならい9月だった。しかし、1887年に高等師範学校が新学年を4月開始に変更。その大きな理由の一つは、従来9月だった徴兵検査の適齢者の届け出が制度改正で4月に変更され、9月入学のままでは入学志願者が、先に軍に徴兵されてしまうおそれがあったからだという(「教育の文化史」阿吽社)。これをきっかけに学校の4月入学が全国に広がった◆軍の都合で学年の開始期も変わったとは、いかにも戦前の日本的だが、4月の桜と入学式の風景は、今では晩春の歳時記にすっかり定着している◆たくさんの希望を胸に入学する新入生。この子どもたちの幸福と成長を守り育めるよう、われわれも責任と自覚を新たに、スタートを切りたい。(千)