e男性の育休取得を応援
- 2016.04.15
- 情勢/解説
公明新聞:2016年4月15日(金)付
仕事と子育ての両立を後押し
広島県
仕事と子育ての両立を望む男性を後押ししようと、政府は2016年度から、男性従業員に育児休業(育休)を取得させた事業主に対して助成金を支給する。広島県では、国に先駆けて中小企業を対象に、男性の育休に奨励金を給付する制度を実施し、成果を挙げている。
最大30万円 中小企業に奨励金
「育休を取得して、より積極的に育児をするようになった」。こう語るのは、昨年6月に育休を取った広島市在住の渡邉宗豊さん(43)。育休の取得がきっかけとなり、今では可能な限り早めに退社し、息子を保育所に迎えに行っているという。
渡邉さんが勤務するのは、そうめん生産工場や水産加工場などで使用される冷風乾燥機のメーカー、旭調温工業株式会社(同市)。従業員41人の会社で、渡邉さんは総務部の課長を務める。
育休を取得したのは、次男が1歳になる前で、「次男が生まれ、長男は母親を取られたような気持ちになり、ナーバスな状態になっていた」という。渡邉さんは、同社代表取締役の粟屋充博さん(58)に事情を相談し、育休を取ることに。「男女を問わず、働きやすい職場をつくる必要がある」と以前から考えていた粟屋さんは、「社内で前例がなかった中で、先進事例になってくれた」と語る。
全国平均を大きく上回る成果
同社のように育休の取得を促進する中小企業は、広島県内で増加している。その後押しの一つとなっているのが、同県の「いきいきパパの育休奨励金」制度だ。
2010年4月に創設された同制度は、男性の育休取得者がいる中小企業(従業員300人以下)に対し、奨励金を支給する。1カ月以上の育休取得者が出た場合は、1人目に30万円、2人目以降に20万円を給付。1週間以上1カ月未満の際は、1人目に20万円、2人目以降に10万円が支給される。1社当たり5人分までが上限。
奨励金を受け取る条件として、企業は「一般事業主行動計画」を策定し、国への届け出を行うとともに、県の「仕事と家庭の両立支援企業登録制度」と「育メン休暇応援制度」への登録が必要となる。奨励金の支給件数は、今年3月末時点で、延べ277件に上っている。
このほかにも、同県は、男性の育児参画を応援する経営者による「イクメン企業同盟」を結成(14年3月)し、サミットを開催するなど普及啓発に取り組んできた。15年12月には、企業において仕事と生活の両立に取り組む経営者、イクボスを普及するため、「イクボス同盟ひろしま」と改称。企業内で、男性の育児や家事の参画を進める環境づくりを推進している。結成時に20人だったメンバーは、今年3月末時点で100人に達した。
こうした取り組みが功を奏し、09年度まで全国平均を下回っていた同県の男性の育休取得率は、12年度に全国平均を大きく上回る7.2%まで上昇。県働く女性応援課は「施策をさらに充実させ、男性が積極的に育児に参画できる社会をつくっていきたい」としている。
政府、16年度 助成金制度を創設
厚生労働省の調べでは、男性の約3割が育休を取得したいと答える一方、実際の取得率は2.3%(14年度)にとどまる。希望出生率1.8の実現をめざす政府は、20年度に男性の育休取得率13%を目標としている。
16年度には、過去3年間で男性の育休取得者が1人もいない企業を対象に、「出生時両立支援助成金」を支給する。1人目の取得者が出れば、中小企業(300人未満)は60万円、大企業は30万円、2人目以降は一律15万円を給付する。
支給対象となるのは、出産から8週間以内に、中小企業で5日以上、大企業で2週間以上の育休を取ることが条件。1企業につき年度で1人を限度とする。
公明、法改正などで環境整備を推進
公明党は、育休中の収入減に対する不安を和らげるため、育児休業給付の給付率を、これまでの50%から67%へと引き上げを推進。また、両親ともに育休を取る際には、取得可能な期間を1年から1年2カ月に延長する育児・介護休業法の改正をリードした。