eコラム「北斗七星」

  • 2016.04.21
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年4月21日(木)付



「ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしい」。約80年前だが、防災科学に力を注いだ物理学者・寺田寅彦の警告は重みを増す◆地震国であり、災害大国である日本。その現実を謙虚に受け止め、人智を超える大自然の脅威に真正面から対応する姿勢が欠かせない◆「過去の経験則から外れている」。今回の熊本地震について気象庁がこう述べるように、「想定外」が起こり得ることを痛感させられた。複数の断層が複雑に動く。激震が続発し緊急地震速報が間に合わない場面があった。収まらない余震を恐れ、屋外での避難が長期化する懸念も◆活断層は全国に2000以上あり、いつ大地震に襲われても不思議ではない。陸域が震源となる活断層型の地震は地震の規模が海溝型ほど大きくなくても、人が暮らす地域や交通網などの直下で起きると深刻な被害をもたらす。政府の地震調査委員会の平田直委員長は「自分のこととして考えて備えてほしい」と呼び掛ける◆不断の準備と心構えがいかに大切か。「想定にとらわれない」防災教育を訴える群馬大学大学院の片田敏孝教授が語るように、「子どもから高齢者までが同じ意識を持って、危機に向き合う能力を培っていく」社会全体の取り組みが急務だ。(紀)

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