e建設現場改革 新技術の活用で安全な職場に
- 2016.05.09
- 情勢/社会
公明新聞:2016年4月29日(金)付
3K(きつい、汚い、危険)のイメージが依然根強い建設現場に、最先端の情報通信技術(ICT)を導入し、若者や女性にとっても魅力的で、安全な職場に変える。その取り組みが今、加速している。
建設現場の生産性向上をめざす「i-construction(アイ・コンストラクション)」と名付けられた施策がそうである。石井啓一国交相(公明党)が昨年11月に表明し、国交省の有識者委員会が今月、その基本方針や具体策などを提言する報告書をまとめ、本格的に動き出す。
建設現場を取り巻く環境は非常に厳しい。
まず、人手不足が深刻だ。国交省によると、建設現場で働いている技能労働者約340万人(2014年時点)の3分の1に当たる約110万人が、今後10年間で高齢化などを理由に離職するという。
だからこそ、少ない人手でも作業を可能にする"生産性革命"が必要である。
また、建設現場が他に比べて危険な職場であることも否定できないだろう。国交省は、建設業界における死傷事故率が、全産業の2倍に上ることに懸念を示している。特に、高所での作業における転落や、転倒した建設機械の下敷きになるなどの事故が多いという。
神戸市の新名神高速道路の工事現場で、鋼鉄製の橋桁が架設中に20メートル下の国道に落下し、作業員2人が22日に死亡したばかりである。
それだけに、同施策が進めば、建設現場の環境は大きく変わる。例えば、ドローン(無人航空機)で空から工事現場を測量することで、3次元化されたデータによる立体的な設計図をつくれる。
その設計図をコンピューターで制御されたブルドーザーなどの重機に共有させ、遠隔操作で動かせば、人がいない場所での作業も可能だ。
経験の少ない若手や女性でも簡単に操作できるため、建設現場での女性の人材活用が進むことが期待できる。高所や重機周りで人が作業することも減るため、安全性も格段に高まる。
ただ、民間で3次元化した設計図を作っても、公共事業では従来の設計図の提出を求められる。新たな技術に対応した行政側の変革も急務だ。