eコラム「北斗七星」
- 2016.05.09
- 情勢/社会
公明新聞:2016年5月7日(土)付
米国のオバマ大統領が26、27両日の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に出席した後の広島訪問を検討しているという。実現すれば、原爆を投下した米国の現職大統領が被爆地を訪れるのは初めてで、被爆者ら市民の期待は高まっている◆同大統領は就任直後の2009年4月、チェコのプラハで歴史的な演説を行った。「核兵器を使用した唯一の核保有国として、米国には行動する道義的責任がある。(中略)米国は核兵器のない世界の平和と安全を追求することを誓約したい」◆この「プラハ演説」は世界から称賛を受け、オバマ氏はノーベル平和賞を受賞。核廃絶に向けた国際的な機運を後押しした◆しかし、その後の7年間で期待は失望に変わる。オバマの米国は、核兵器の性能を維持する核実験を繰り返し、核兵器の非人道性に焦点を当てて法的禁止を求める非核保有国と鋭く対立。核軍縮交渉もロシアとの関係悪化で停滞している◆「リアリズムと理想主義の奇妙な混合がオバマの特徴」(村田晃嗣著『現代アメリカ外交の変容』)なのだろう。それでも、大学4年生で「核なき世界」を提唱する論文を書いたバラク・フセイン・オバマの理想は潰えていないと思いたい。いま一度、ヒロシマから「核兵器のない世界」を現実のものとする強いメッセージを発してもらいたい。(中)