eコラム「北斗七星」
- 2016.05.09
- 情勢/社会
公明新聞:2016年5月9日(月)付
大好評を博した「あさが来た」に続き、NHK朝ドラ「とと姉ちゃん」も高視聴率をキープしている。前作同様、このドラマにもモデルとなった実在の女性がいる。「暮しの手帖」を創刊した大橋鎭子さんだ◆先の大戦敗戦の翌年、「どんなにみじめな気持ちでいるときでも、つつましいおしゃれ心を失わないでいよう」と服装雑誌を立ち上げ、それが後に「暮しの手帖」(1948年発刊)へと発展していく◆「暮しの手帖」で一世を風靡した企画といえば、何といっても1954年から掲載された「商品テスト」で、覚えている方も多いだろう。「消費者に良い商品を」という視点だけではなく、「より良い商品を企業に作ってもらう」ことを最大の眼目としてスタートした同企画は、瞬く間に評判になった◆企業の関与を一切排除したテストは社員が独自に行ったが、その内容がすごい。トースターのテストに使ったパンは4万枚以上、ベビーカーでは100キロ走行させて乗り心地を試した。火事に関連したテストでは家一軒を燃やす実験まで行っている◆その徹底ぶりから企業の反発もあったが、世界をめざす当時の日本の物作りに、同誌は誌上からエールを送り続けた。自動車の燃費偽装が相次いで明らかになっている。日本の物作りの原点を忘れてしまったのか。(爽)