e日ロ首脳会談 平和条約交渉 前進への一歩に
- 2016.05.09
- 情勢/国際
公明新聞:2016年5月9日(月)付
「未来志向」の関係構築への一歩となることを期待したい。
安倍晋三首相は6日、ロシアのソチでプーチン大統領と会談した。2014年のウクライナ問題発生以降、停滞した北方領土問題の解決を含む平和条約締結交渉が、首脳会談によって再び動き出した。
日ロ両国は、戦後70年を経た現在も平和条約を締結していない異常な状況にある。交渉を前進させるため両首脳は、新たな発想に基づくアプローチで交渉を進めることで一致した。
この「新たなアプローチ」の詳細は明らかではないが、「2人で未来志向の日ロ関係を構築していく中で解決しよう」と両首脳が確認した意義は大きい。特に北方領土問題については、両国の間で考えに大きな隔たりがある上、ロシア側は閣僚らによる訪問など強硬な姿勢を示しており、予断を許さない。
こうした現状を打開するには、信頼関係を築いてきたトップ同士の対話に期待するほかない。9月にもロシアのウラジオストクで再び首脳会談を行うことが予定されている。問題の早期解決へ、交渉を加速化させるべきだ。
ロシアの排他的経済水域(EEZ)で今年1月からサケ・マス流し網漁が禁止され、北海道東部の漁業関係者などが大きな影響を被っている。両国はこれまでも流し網漁に代わる漁法などを話し合ってきたが折り合っていない。首相がロシア側に日本の操業機会の確保を訴え、協力を求めたことは重要だ。これをきっかけに政府間協議を活発化させ、北海道の地元漁業者が操業できるようにしてもらいたい。
今月26、27日には日本で主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)が開催される。サミットは本来、ロシアも含めたG8で行われていたが、ウクライナ問題を機にG7になった経緯がある。今回の会談でロシアが関与するウクライナ、シリア情勢をめぐり意見交換したことにより、サミット議長国としての役割を発揮できたのではないだろうか。
ロシアは北東アジアのみならず国際社会に強い影響力を持つ。日本政府は両国関係を強化しつつ、課題解決への道筋を付けてほしい。