e社会人の学び直し キャリアアップの機会拡大を

  • 2016.05.10
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年5月10日(火)付



より高い資格・能力を習得し、職業人としての可能性を広げるキャリアアップ―。社会人の多くは変化の激しい時代を生き抜くため、大変な努力を続けている。

戦後の日本を支えてきた人材の多くは、企業内で実施される"実務を通した教育訓練"であるオン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)で鍛えられてきた。

しかし、グローバル化による競争の激化やIT(情報技術)の発達によって、高度な知識・技術が求められ、また、OJTの前提である終身雇用の慣行までも変化しつつある現在、OJTだけでは間に合わなくなった。キャリアアップをめざす人たちへの支援は社会的なテーマになった。

公明党は先月、政府が進めている1億総活躍プランの策定に関し、キャリアアップに向けた社会人の「学び直し」を支援、促進するよう安倍首相に申し入れた。キャリアアップに役立つ教育プログラムが専修学校や大学、大学院などの高等教育機関で提供されるよう求めている。

高等教育機関での「学び直し」には大きな利点がある。OJTでも高度な専門技能を身に付けることはできる。しかし、高等教育機関の場合、それに加え、技術や時代の変化に対応できる深い教養(学術知)と、理論に裏打ちされた実践力(実践知)を同時に身に付けるための教育プログラムの開発が可能となる。

経済協力開発機構(OECD)加盟34カ国では多くの社会人が大学に受け入れられ、25歳以上の大学入学者の割合は平均で約18%に上る。ところが日本の4年制大学は約2%で最低水準だ。

文部科学省は現在、質の高い専門職業人を養成するための新たな高等教育機関について審議をしており、3月にその経過報告をした。この中で、新たな高等教育機関は大学、短期大学など大学体系として設置し、社会人の「学び直し」にも対応することが提案されている。

卒業年限を延長して仕事のペースに合わせて学ぶことが可能なパートタイム学生の制度や、学費の支援、また、従業員の「学び直し」を奨励し、そこで得た資格・能力を適正に評価する労働環境の整備も検討する必要がある。

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