eコラム「北斗七星」
- 2016.05.13
- 情勢/社会
公明新聞:2016年5月13日(金)付
喜劇なのか、悲劇なのか。今年で没後400年となるスペインの文豪セルバンテスの名作、ドン・キホーテは、今も解釈を巡って多様な考えが飛び交う。騎士道に魅了された主人公が、自分を伝説の騎士と思い込み、世の中の不正をただすため遍歴の旅をする。理想と現実との相克などがふんだんにあり、実に奥が深い◆そのスペインで政治の混乱が続いている。昨年末の総選挙では、どの政党も過半数議席に届かなかった。主要政党は政権樹立をめざして連立協議を行ったが不調に終わり、再度、国会を解散して再選挙に踏み切る◆新内閣の誕生は、早くても6月下旬の出直し選挙の結果を待ってから。政治に不透明感が出ると、経済の先行きに霧が立ちこめても不思議ではない。長引く政治空白が、景気の足どりを重くしないか不安の声が高まっている◆政治や経済の分野で、時計の針がむなしく回り続けることが許されないのは日本も同じ。国民の声を敏感に探り、的確な政策を実行に移す政治が欠かせない◆安全保障関連法の廃止を叫ぶ一部野党は、「核保有宣言」をした北朝鮮の脅威を無視するのか。NHKの調査によると、有権者は参院選の投票に当たって社会保障や景気を重視するが、なぜ憲法を据えようとするのか。現実を見ない政治は国民にとって悲劇である。(明)