e待機児童の解消に挑む
- 2016.05.13
- 生活/生活情報
公明新聞:2016年5月13日(金)付
「共働き子育てしやすい街」総合1位
特区活用、公園に保育所
東京・荒川区
保育所の入所待ちをする待機児童の解消に向け、国・自治体がさまざまな対策に乗り出している。このうち、保育の施設整備や、きめ細かな子育て支援策で、高く評価されている東京都荒川区を追うとともに、公明党の取り組み、政府が最近発表した支援策を紹介する。
昨年12月、日本経済新聞社と日経BP社「日経デュアル」が1都3県と全国主要都市計100自治体を対象に行った調査結果を基に作成した「共働き子育てしやすい街」の総合ランキングで、荒川区は1位の評価を受けた。
同区では、保育に関わる保護者への支援として、多子世帯への保育料減免制度や、認可外保育所と認可保育所との保育料の差額を補助する制度を他の自治体に先駆けて実現。病児・病後児保育施設の整備、放課後児童事業の充実に加え、双子など多胎児がいる在宅の子育て世帯への支援策として、タクシー利用料や一時保育利用料の助成(ともに限度額2万円)など、多彩な支援策をそろえた。
一方、保育の受け皿を拡充するため、保育施設の定員の増加も行ってきた。2004年度の同区の保育定員は3076人だったが、16年度は5305人に拡大。認可保育所や東京都独自の「認証保育所」の新設、保育ママの増員などにより、これまで2200人を超える定員を拡大した。
老朽化が課題となっていた私立保育所には、区が新たに取得した土地への移転・改築を支援。定員を拡大して新装開所にこぎ着けている。
さらに、都市部の課題である保育所の用地確保で、同区が注目したのが、国家戦略特区制度を活用した公園内保育所の整備だ。現行の都市公園法では、公園内に設置できる施設はトイレやベンチ、遊具などに限られている。特区により、この規制が緩和され、都市公園内での保育所整備が可能となる。
荒川区は、特区制度の活用を国に申請し、全国で初めて認定された。現在、都立汐入公園内に私立認可保育所の整備が進められ、来年4月に開所予定だ。
内閣府地方創生推進事務局によると、今月12日現在、都内の荒川区、世田谷区、品川区に加え、横浜市が特区を活用して都市公園に保育所を整備する認定を受けており「まだまだ認定を希望する自治体がある」という。
国の支援策に公明の提言反映
コンシェルジュ設置促進、施設定員の弾力化など
公明党は3月10日、待機児童対策推進プロジェクトチーム(PT)を発足させ、関係団体や自治体などからヒアリングを行ってきた。同25日には、地方議員などと連携して取りまとめた緊急提言を安倍晋三首相に手渡した。
公明党の提言を受け、厚生労働省は同28日、緊急的な施策を発表。その後、施策全体を詰め、4月7日付で保育事業を担う自治体に通知した。
具体的には、待機児童の約8割を占める0―2歳児の受け皿確保に向け、原則2歳児までの小規模保育所について、(1)定員上限を19人から22人まで拡大(2)受け入れ対象を3歳児まで拡大(3)3歳児以降の受け皿となる連携施設の確保――を推進するとした。
また、コンシェルジュ(相談員)が夜間や休日に時間外の相談業務を行う場合、補助金が窓口1カ所当たり年間約187万円上乗せされる。
このほか、用地確保を進めるための賃料補助や国有地などの有効活用、保育士のキャリアアップ支援へ研修の推進などが盛り込まれている。
また、公明党が提言した「幼稚園の預かり保育への支援強化」についても、文部科学省が4月22日、幼稚園での待機児童受け入れを積極的に促すよう都道府県などに通知。0―2歳児の長時間の預かり保育を行う場合、国が定める研修を修了した「子育て支援員」を配置すればよいとした。3歳児受け入れも、幼稚園の教育時間外に4時間を超えて預かった場合に加算している補助金を最大3倍にするとしている。
待機児童対策は、保育施設の整備だけでなく、保育士の確保も急務だ。公明党は、党PTの緊急提言で他職種に比べ低い保育士の賃金水準を、まずは確実に約4%引き上げ、さらなる賃上げを検討するよう求めている。また、参院選の重点政策の中で、保育を含めた福祉人材の養成・確保、賃金引き上げなど処遇改善、社会的評価の向上、キャリアアップ支援などを掲げている。